明恵上人(みょうえしょうにん)紀州遺跡 笠塔婆

  明恵上人が誕生・修行した紀州 有田の地 八ヶ所に、弟子の喜海が嘉禎二年(1236)に木造卒塔婆をたてた。これが古くなり、康永三年(1344)弁迂が勧進し、石造卒塔婆に建替えた。

 明恵上人紀州遺跡 糸野(いとの)卒都婆(和歌山県有田郡有田川町糸野字上人谷650-1)

   明恵上人が鎌倉時代初期 建仁二年(1202)、伯父 上覚上人から伝法灌頂受けた所に立つ笠塔婆。紀州八所遺跡の一つ。

明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 糸野卒都婆 (国史跡、南北朝時代前期 康永三年 1344年、砂岩)

塔身・笠・宝珠を一石から彫成、塔身正面に明恵上人の高弟 喜海が嘉禎二年に建立した木造卒塔婆の文面を刻む。

明恵上人 二十九歳の建仁元年(1201) 伯父 湯浅宗光の招きにより、筏立(いかだち)から十人余りの弟子と共にここ糸野に移住した。翌 建仁

二年(1202) 伯父 上覚上人から伝法灌頂(でんぽうかんじょう)を受け、阿闍梨の資格を得る。また、本格的な涅槃会を行った地でもある。口口

笠は、両端で美しく反る。

笠塔婆正面、上方の本尊種子「バン」

正面上方、「毘盧舎那如来」 正面下方の刻銘

塔身正面、上方に大きく種子「バン」、下に「毘盧舎那如来」、下方に「建仁二年(1202)壬戌、付上覚上人、入檀灌頂処」、

「嘉禎二年(1236)、丙申、十一月十九日造立之、比丘喜海謹記」と刻む。

[ 建仁二年(1202) 上覚上人により灌頂を受けし処。嘉禎二年(1236)十一月十九日造立 喜海記]

明恵上人の高弟 喜海が嘉禎二年(1236)に建立した木造卒塔婆の文面がそのまま刻まれている。

塔身正面下方、上段の刻銘

刻銘:「建仁二年(1202)壬戌、付上覚上人、入檀灌頂処」

[ 建仁二年(1202) 上覚上人により灌頂を受けし処。]

塔身正面下方、下段の刻銘

刻銘:「嘉禎二年(1236)、丙申、十一月十九日造立之、比丘喜海謹記」

[ 嘉禎二年(1236)十一月十九日造立 喜海記]

笠塔婆、基礎

方形で、側面は無地。

笠塔婆、西面及び背面 笠塔婆、東面

明恵上人 紀州遺跡 糸野(いとの)卒都婆

背面に「嘉禎年中所立木卒塔婆朽損之間 今勧進一族以石造立依之此結縁 各預上人之引導可令

成就二世願望者也 康永三年(1344)甲申九月十九日」、西面の下方に「願主 寺僧竝結縁衆」の刻銘がある。

[ 嘉禎年中に立てた木造卒塔婆が古くなり、康永三年(1344)九月十九日、寺僧並びに結縁衆により石造卒塔婆に建替えた。]

指定 名       称 制  作  年 所    在    地
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 吉原笠塔婆     康永三年(1344年) 和歌山県有田郡有田川町歓喜寺字中越179
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 西白上笠塔婆  康永三年(1344年) 和歌山県有田郡湯浅町栖原
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 東白上笠塔婆 康永三年(1344年) 和歌山県有田郡湯浅町栖原
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 筏立笠塔婆 享和二年(1802年) 和歌山県有田郡有田川町歓喜寺字西原1103
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 糸野笠塔婆     康永三年(1344年) 和歌山県有田郡有田川町糸野字上人谷650-1
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 星尾笠塔婆     康永三年(1344年) 和歌山県有田市星尾
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 神谷後峰笠塔婆   康永三年(1344年) 和歌山県有田郡有田川町船坂字聖人793-1
明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 内崎山笠塔婆  昭和八年(1933年) 和歌山県有田郡有田川町井口22-2

明恵上人 紀州八所遺跡 笠塔婆一覧

 糸野(いとの)五輪板碑 (和歌山県有田郡有田川町糸野字上人谷650-1)

  笠塔婆の石柵内に立つ。五輪塔形を刻んだ板碑で、室町時代後期 永禄年間(1558~70)の紀年銘がある。

糸野(いとの)五輪板碑 (室町時代後期 永禄年間 1558~70年、砂岩、高さ 29Cm)

板碑の正面に五輪塔形を薄肉彫りし、各輪に五輪塔四門の梵字(西) 菩提門 「ケン・カン・ラン・バン・アン」を刻む。

刻銘:「永禄口口(1558~70)、口口三日」

 糸野(いとの)一石五輪塔 (和歌山県有田郡有田川町糸野字上人谷650-1)

     糸野(いとの)一石五輪塔 (室町時代後期 永禄十一年 1568年、砂岩、高さ 74Cm)     

一石五輪塔は、空輪を欠失する。地輪の一面に「學 [尚阝] 宗圓禅定門」、「永禄十一年(1568)、戊辰、正月十三日」の刻銘がある。[ 尚阝] は、一字。

 明恵(みょうえ)上人 紀州遺跡 吉原卒塔婆                     石仏と石塔-目次!

明恵上人 紀州 糸野遺跡 (灌頂を受けた地)

伯父の地頭職 湯浅宗光の招きにより、ここ糸野 成道寺 背後の草庵に移住した。

明恵上人 略年表

 笠塔婆(かさとうば)                         板碑(いたび)

*JR紀勢線「藤並駅」下車、東北東方向へ 約7.5Km。藤並駅の観光案内所で、無料レンタサイクルを借りるのが便利。

(撮影:平成25年12月24日)