常楽寺(じょうらくじ)三重石塔と町石笠塔婆

 常楽寺(じょうらくじ)(兵庫県加古川市上荘町井ノ口158)

   加古川市には、加古川町の常楽寺と当 上荘町の常楽寺があり、それぞれに県指定文化財の石造美術品を有している。

 常楽寺(じょうらくじ)三重石塔

常楽寺(じょうらくじ)三重石塔 (鎌倉時代中期、凝灰岩、高さ 156.7Cm)

三層部、頂部に露盤をつくる
三重石塔は、本堂前方の道を西に突き当った高所に立っている 二層部、各層、軒は厚く、下端を水平に、軒口を垂直に切る

加古川市の北側に隣接する加西市の慈眼寺五重石塔(鎌倉中期:弘安六年 1283年)坂元阿弥陀堂五重石塔(鎌倉時代中期)に、形状や雰囲気が酷似し、

また北西に隣接する姫路市の今念寺五重石塔(鎌倉中期:弘安三年 1280年)にも似ており、鎌倉前・後期の作品と形状が異なる為、鎌倉中期の作品と推定した。

尚、加古川市史で田岡香逸氏は鎌倉時代前期後半(承元四年:1210年~文暦元年:1234年)と推定され、現地の説明板では鎌倉時代末期の作品と推定している。

初 層 軸 部

縦長の軸部で、四面とも素面。四方仏の種子もない

初層部、各層の屋根上部に、上層の軸部をつくりだす
基壇、切石の方形基壇 相輪と基礎を欠失し、当初高は約180Cmで六尺塔として造立された

 常楽寺(じょうらくじ)町石笠塔婆

常楽寺町石笠塔婆(南北朝時代後期 永徳二年 1382年、凝灰岩、笠上までの高さ 81.1Cm)

軒口は厚く、屋根の下端はほぼ一直線で両端がわずかに反る

町石笠塔婆は、参道の入口あたり、覆屋の中央に立っている。方柱の塔身上部に舟形を彫りくぼめ、定印の阿弥陀坐像を半肉彫りする

阿弥陀坐像の下、蓮華座は、描かれたもので、刻まれていない。下方に永徳二年(1382)の紀年銘と銘文を刻んでいる

屋根は上端に露盤をつくらず、軒は緩やかに反り、軒口は垂直に切っている

塔身 下方の銘文

向かって右に「自日光寺一丁」、左に「永徳二(1382)八廿南阿」の刻銘がある。

「自日光寺一丁」の日光寺は、常楽寺の旧名とみられている。同様の表示として、加西市の 一乗寺町石笠塔婆が「自金堂一町」と刻んでいる

紀年銘の「八廿」は八月二十日、「南阿」は南無阿弥陀仏の略で法名。

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常楽寺(じょうらくじ)五輪塔(室町時代前期、凝灰岩、高さ 146Cm)

三重石塔前の道を奥に行った護摩堂跡に立っている

 笠塔婆(かさとうば)

* JR加古川線「厄神駅」下車、北東方向へ 徒歩 約35分。上荘橋を渡り加古川の対岸(北岸)に出る。加古川沿いの道を東方向へのんびりと歩く。

(撮影:平成22年5月17日)