慈恩院(じおんいん)(宮城県石巻市吉野1-3-15)
中列、向って左から二番目。「十三回忌」(本地仏:大日)に造立された石塔婆で、室町時代前期 応永十四年(1407)の在銘。
慈恩院 胎蔵界大日種子石塔婆 (室町時代前期 応永十四年 1407年、粘板岩、高さ 127.5Cm 幅 32Cm 厚さ 19Cm)
頭部は、ほぼ欠損。身部は、上方 胎蔵界大日種子「アーンク」、その下 四行で往生要集に出る偈(げ)、下方に三行で願文・紀年銘を刻む。
石塔婆 上部
胎蔵界大日如来(五点具足)の種子「アーンク」を薬研彫する。種子は、蓮座及び月輪は、なく直接刻む。
往生要集に出る偈(げ)
偈(げ):「極重悪人(ごくじゅうあくにん)、無他方便(むたほうべん)、唯称念仏(ゆいしょうねんぶつ)、得生極楽(とくしょうごくらく)」
[ 極重悪人には他の方便(てだて)なし、ただ念仏をとなえれば、極楽に生まれることができる。]
石塔婆、下方の刻銘 (全文) | 全体に摩耗・摩耗が進み、肉眼ではほとんど判読できない。 |
刻銘は、中央に「右志趣者為 応永十四(1407) 十二月廿日、孝子、 敬白」、
左右に「過去相当大阿十三年忌出離」、「生死頓證菩提(異体文字)乃至法界利益也」と刻む。
本石塔婆は「十三年忌」供養のため造立、身部に刻む本尊は種子「アーンク」(胎蔵界大日)となっている。
尚、通常は願文の冒頭部分にある「右志趣者為」の部分が、向って右側ではなく中央の紀年銘の上にあるのも注目される。
慈恩院(じおんいん)(宮城県石巻市吉野1-3-15)
石塔婆群、中列 向って左から三基目。碑面に一字文殊種子「シリキエン」という珍しい種子を刻んでいる。紀年は不明。
慈恩院(じおんいん)一字文殊種子石塔婆 ( 紀年銘なし、粘板岩、高さ 75Cm 幅 32.5Cm 厚さ 8Cm)
石塔婆は、下方の刻銘部を決失し、上方の種子部のみを残す。
石塔婆 上部
一字文殊(一髻文殊)の種子「シリキエン」を刻む。
慈恩院(じおんいん)(宮城県石巻市吉野1-3-15)
後列、向って右から三基目、前面に弘安七年碑の上部がたて掛けてある。月輪の内側に光明真言を刻む石塔婆で、南北朝時代後期 永徳三年(1383)の在銘。
慈恩院(じおいん)金剛界大日種子石塔婆 (南北朝時代後期 永徳三年 1383年、粘板岩、高さ 77Cm 幅 24.5Cm 厚さ 7Cm) |
身部は、上方 月輪内に金剛界大日種子「バン」、その月輪の内側に沿って梵字「光明真言」、下方は偈(げ)及び願文・紀年銘を刻む。
石塔婆、上方
月輪内 下側位置に金剛界大日如来の種子「バン」を薬研彫する。
さらに、月輪の内側に沿って十二時の方向から時計回りに梵字「光明真言」刻む。
光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャナ、マ、カーボ、ダラ、マ、ニ、ハンドマ、ジンバ、ラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」
妙行心要集(源信撰)に出る偈(げ)
偈(げ):「妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)、是大摩訶衍(これだいまかえん)、衆生如教行、自然成仏道」
[ 妙法蓮華経は、これ菩提の正道(大乗。大きい乗物)なり、衆生は教えの如く行ずれば、自然に仏道を成ぜん 。]
偈(げ)の下に、下記の刻銘がある。
刻銘は、中央に「右志者 永徳三年(1383)」、左右に「相当妙口」、「景乃至口界口等利」と刻む。
尚、通常は願文の冒頭部分にある「右志者」の部分が、中央の紀年銘上にあるのも応永十四年銘 胎蔵界大日種子石塔婆 同様注目される。
多福院 阿弥陀種子石塔婆 (吉野先帝菩提碑). 石仏と石塔-目次!
慈恩院(じおんいん)石塔婆群
*JR石巻線・仙石線 「石巻駅」下車、南東方向へ徒歩 約1.7Km。
(撮影:平成26年4月10日)