塩谷(しおたに)十三仏種子板碑(Ⅰ)

 塩谷(しおたに)十三仏種子板碑 (兵庫県神埼郡市川町上牛尾)

  十三仏種子を一尊一石で刻んだ板碑で、十三仏の内①.初七日(不動)、.二七日(釈迦)、.三七日(文殊)、.四七日(普賢)、.六七日(弥勒)、の五基が失われ、八基が残っている。

  ①.不動種子板碑・初七日(亡失)

  ②.釈迦種子板碑・二七日忌(十四日忌)(亡失)

 ③.文殊種子板碑・三七日忌(二十一日忌)(亡失)

  ④.普賢種子板碑・四七日忌(二十八日忌)(亡失)

⑤.地蔵種子板碑・五七日忌(三十五日忌)

       十三仏信仰の内、三十五日忌の本尊 地蔵菩薩の種子「カ」と光明真言を刻む板碑で、碑面に「三十五日逆修」の刻銘がある。

塩谷地蔵種子板碑(五七日忌) (県指定文化財、室町時代前期、凝灰岩、高さ 93Cm 下幅 18Cm 根部幅 22cm)

向かって右から二基目。身部は上方に地蔵種子「カ」、その下 二行にわたって光明真言、下端中央に「三十五日逆修」の刻銘がある。

板碑 頭部

頭部山形、下に額部をつくる。

板碑 上部

三十五日忌の本尊 地蔵菩薩の種子「カ」を刻む。

 
身部は、二行にわたり「光明真言」が刻まれている。 刻銘:「三十五日逆修」

光明真言(梵字):「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ、マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」

光明真言は二行で刻まれるときは、普門寺阿弥陀一尊種子種子板碑のように、「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャナ、マ、カー、ボ、ダラ」、

で一行、「マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」で一行、左右に刻まれているのが普通だが、

本碑の光明真言は、下記のように、左右列の右左・右左・・・と一字ずつ続き、最後に終止符「ダ」で終わっている。

向かって右列  オン 、ボ 、ベイ 、シャ 、マ 、ボ 、マ 、ハン 、ジンバ 、ハラ 、リタ 、ウーン
 
向かって左列   、ギャ 、ロ 、ナ 、カー 、ダラ 、ニ 、ドマ 、ラ 、バ 、ヤ ダ(終止符)

  ⑥.弥勒種子板碑・六七日忌(四十二日忌)(亡失)

⑦.薬師種子板碑・七七日忌(四十九日忌)

       十三仏信仰の内、七七日忌の本尊 薬師如来の種子「バイ」と光明真言を刻む板碑で、碑面に「四十九日逆修」の刻銘がある。

塩谷地蔵種子板碑(七七日忌) (県指定文化財、室町時代前期、凝灰岩、高さ 101Cm 下幅 16.5Cm)

向かって右端。身部は上方に薬師種子「バイ」、その下 二行で光明真言、下端中央に「四十九日逆修」の刻銘がある。

板碑 頭部

頭部山形、下に額部をつくる。

板碑 上部

四十九日忌の本尊 薬師如来の種子「バイ」を刻む。

 
身部は、二行にわたり「光明真言」が刻まれている。 刻銘:「四十九日逆修」

光明真言(梵字):「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ、マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」

三十五日忌碑と同様、光明真言は、二行の右左・右左・・・と一字ずつ続き最後に終止符「ダ」で終わっている。

向かって右列  オン 、ボ 、ベイ 、シャ 、マ 、ボ 、マ 、ハン 、ジンバ 、ハラ 、リタ 、ウーン
 
向かって左列   、ギャ 、ロ 、ナ 、カー 、ダラ 、ニ 、ドマ 、ラ 、バ 、ヤ ダ(終止符)

板碑 下部

根部と下部は同じ幅。

十三仏種子板碑群、 向かって右側の四基 (県指定文化財、室町時代前期)

向かって右から.バイ(七七日・薬師)、.カ(五七日・地蔵)、 .サク(一周忌・勢至)、.キリーク(三回忌・阿弥陀)。

十三仏順序 名   称 種子 忌日・忌年 身部の梵字 願文 紀年銘
 5 地蔵種子板碑 カ  五七日 光明真言 三十五日逆修
 7 薬師種子板碑 バイ  七七日 光明真言 四十九日逆修
 8 観音種子板碑  サ 百か日 ア・ビ・ラ・ウーン・ケン 逆修・善根
 9 勢至種子板碑  サク 一周忌 キャ・カ・ラ・バ・ア 一周忌常念、逆修善根
 10 阿弥陀種子板碑 キリーク  三年忌 バン・ウーン・タラーク・キリーク・アク 第三年、逆修善根
 11 阿閦(あしゅく)種子板碑 ウーン  七年忌 キャー・カー・ラー・バー・アー 七年忌、常念為、逆修善根
 12 金剛界大日種子板碑  ウーン 十三年忌 キャク・カク・ラク・バク・アク 十三年忌、逆修 応永二十一年(1414年)
 13 胎蔵界大日種子板碑 アーンク  三十三年忌 バン・ウーン・タラーク・キリーク・アク 三十三年、為逆修善根 応永二十年(1413年)

塩谷(しおたに)十三仏板碑群 現存碑一覧

 塩谷(しおたに)十三仏種子板碑(Ⅱ)                           石仏と石塔-目次!

塩谷(しおたに)十三仏種子板碑群 (県指定文化財、室町時代前期)

板碑は上方に各々の十三仏種子が刻まれ、中央の阿弥陀石仏を挟んで左右に四基ずつ計八基が現存し、五基が不明。

参考文献:「塩谷の十三仏種子板碑群」(田岡香逸 著 『史迹と美術 335号』・「十三仏信仰と大阪の庚申信仰」(奥村隆彦 著 岩田書院)

 十三仏 板碑 他

*JR播但線 甘地駅前から市川町コミュニティバス(運行は火・金曜日の週二回2便)に乗車、「塩谷バス停」下車 徒歩 約5分。バス停付近に案内標識がある。

(撮影:平成27年11月13日)