塩谷(しおたに)十三仏種子板碑 (兵庫県神埼郡市川町上牛尾)
十三仏種子を一尊一石で刻んだ珍しい板碑で、八基が残っている。
十三仏信仰の内、百カ日忌の本尊 観音菩薩の種子「サ」と大日報身真言を刻む板碑で、碑面に「逆修、善根」の刻銘がある。
塩谷観音種子板碑(百カ日忌) (県指定文化財、室町時代前期、凝灰岩、高さ 104Cm 下幅 12Cm 根部幅 26cm)
板碑群の左端。身部は上から、観音種子「サ」、大日報身真言「ア・ビ・ラ・ウーン・ケン」、下端左右に「逆修、善根」の刻銘がある。 |
板碑 頭部
頭部山形は鋭角、下に額部をつくる。
板碑 上部
百カ日忌の本尊 観音菩薩の種子「サ」を刻む。
身部、大日報身真言と刻銘 | 板碑、側背面 |
大日報身真言(梵字):「ア・ビ・ラ・ウーン・ケン」・ダ(終止符)
板碑 下部
向かって右に「逆修」、左に「善根」と刻む。
この碑のみ、忌日が刻まれていない。
十三仏信仰の内、一周忌の本尊 勢至菩薩の種子「サク」と東方発心門(五輪塔四方)の梵字を刻む板碑で、碑面に「一周忌常念、逆修善根」の刻銘がある。
塩谷勢至種子板碑(一周忌) (県指定文化財、室町時代前期、凝灰岩、高さ 119Cm 下幅 22Cm 根部幅 25.5Cm)
板碑群、向かって右から三基目。身部は上から、勢至種子「サク」、五輪塔 東方発心門の梵字、下端左右に願文を刻む。 |
板碑 上部
頭部山形、下に額部をつくる。身部上部は、四十九日忌の本尊 勢至菩薩の種子「サク」が刻まれている。
身部、五輪塔東方 発心門の梵字 | 刻銘:「一周忌常念」 |
五輪塔 東方発心門の梵字:「キャ・カ・ラ・バ・ア」・ダ(終止符)
板碑 下部
向かって右に「一周忌常念」、左に「逆修善根」と刻む。
常念の一周忌相当 逆修供養碑として造立されたことがわかる。
十三仏順序 | 名 称 | 種子 | 忌日・忌年 | 身部の梵字 | 願文 | 紀年銘 |
5 | 地蔵種子板碑 | カ | 五七日 | 光明真言 | 三十五日逆修 | |
7 | 薬師種子板碑 | バイ | 七七日 | 光明真言 | 四十九日逆修 | |
8 | 観音種子板碑 | サ | 百か日 | ア・ビ・ラ・ウーン・ケン | 逆修・善根 | |
9 | 勢至種子板碑 | サク | 一周忌 | キャ・カ・ラ・バ・ア | 一周忌常念、逆修善根 | |
10 | 阿弥陀種子板碑 | キリーク | 三年忌 | バン・ウーン・タラーク・キリーク・アク | 第三年、逆修善根 | |
11 | 阿閦(あしゅく)種子板碑 | ウーン | 七年忌 | キャー・カー・ラー・バー・アー | 七年忌、常念為、逆修善根 | |
12 | 金剛界大日種子板碑 | ウーン | 十三年忌 | キャク・カク・ラク・バク・アク | 十三年忌、逆修 | 応永二十一年(1414年) |
13 | 胎蔵界大日種子板碑 | アーンク | 三十三年忌 | バン・ウーン・タラーク・キリーク・アク | 三十三年、為逆修善根 | 応永二十年(1413年) |
塩谷(しおたに)十三仏板碑群 現存碑一覧
塩谷(しおたに)十三仏種子板碑群 (県指定文化財、室町時代前期)
板碑は上方に各々の十三仏種子が刻まれ、中央の阿弥陀石仏を挟んで左右に四基ずつ計八基が現存し、五基が不明。
参考文献:「塩谷の十三仏種子板碑群」(田岡香逸 著 『史迹と美術 335号』・「十三仏信仰と大阪の庚申信仰」(奥村隆彦 著 岩田書院)
*JR播但線 甘地駅前から市川町コミュニティバス(運行は火・金曜日の週二回2便)に乗車、「塩谷バス停」下車 徒歩 約5分。バス停付近に案内標識がある。
(撮影:平成27年11月13日)