塩谷(しおたに)十三仏種子板碑 (兵庫県神埼郡市川町上牛尾)
十三仏種子を一尊一石で刻んだ珍しい板碑で、八基が残っている。内、十三年忌金剛界大日種子板碑と三十三年忌胎蔵界大日種子板碑には紀年銘がある。
十三仏信仰の内、十三年忌の本尊 金剛界大日如来の種子「バン」と北方涅槃門(五輪塔四方)の梵字を刻む板碑で、碑面に「應永廿一(1414)」の紀年銘がある。
塩谷 金剛界大日種子板碑(県指定文化財、室町時代前期 応永二十一年 1414年、凝灰岩、高さ 127Cm 下幅 21Cm 根部幅 32cm)
板碑群、左から三基目。身部は上から、金剛界大日種子「バン」及び五輪塔 北方涅槃門の梵字、下端に紀年銘及び 願文を刻む。 |
板碑 頭部
頭部山形、下に額部をつくる。身部上端は、十三年忌の本尊 金剛界大日如来の種子「バン」が刻まれている。
身部、五輪塔 北方涅槃門の梵字 | 刻銘:「十三年忌、應永廿一(1414)」 |
五輪塔 北方涅槃門の梵字:「キャク・カク・ラク・バク・アク」
板碑 下部
向かって右から「十三年」、「應永廿一(1414)」、「逆修 善根」と刻む。
室町時代前期 応永二十一年(1414)、逆修 十三年忌相当として、よき果報を受けるべき善因として本板碑を造立した。
塩谷(しおたに)十三仏種子板碑 (兵庫県神埼郡市川町上牛尾)
十三仏信仰の内、三十三年忌の本尊として胎蔵界大日種子「アーンク」(五点具足)と金剛界五仏種子を刻む板碑で、碑面に「応永廿年(1413)」の紀年銘がある。
塩谷 胎蔵界大日種子板碑(県指定文化財、室町時代前期 応永二十年 1413年、凝灰岩、高さ 90Cm 下幅 19.5Cm 根部幅 34.5Cm)
板碑群、左から二基目。身部は上から、胎蔵界大日種子「アーンク」(五点具足)と金剛界五仏種子、下端に紀年銘・ 願文を刻む。 |
板碑 上部
頭部山形、下に額部をつくる。身部上端は、三十三年忌の本尊として胎蔵界大日如来の種子「アーンク」(五点具足)が刻まれている。
身部、金剛界五仏の種子 | 刻銘:「應永廿年(1413)」 |
金剛界五仏種子(上から):「バン(金剛界大日如来)・ウーン(阿閦如来)・タラーク(宝生如来)・キリーク(阿弥陀如来)・アク(不空成就如来)」
板碑 下部
向かって右から「應永廿年(1413)」、「三十、三年」、「為逆修善根」と刻む。
室町時代前期 応永二十年(1413)、逆修 三十三年忌相当として、よき果報を受けるべき善因として本板碑を造立した。
十三仏順序 | 名 称 | 種子 | 忌日・忌年 | 身部の梵字 | 願文 | 紀年銘 |
5 | 地蔵種子板碑 | カ | 五七日 | 光明真言 | 三十五日逆修 | |
7 | 薬師種子板碑 | バイ | 七七日 | 光明真言 | 四十九日逆修 | |
8 | 観音種子板碑 | サ | 百か日 | ア・ビ・ラ・ウーン・ケン | 逆修・善根 | |
9 | 勢至種子板碑 | サク | 一周忌 | キャ・カ・ラ・バ・ア | 一周忌常念、逆修善根 | |
10 | 阿弥陀種子板碑 | キリーク | 三年忌 | バン・ウーン・タラーク・キリーク・アク | 第三年、逆修善根 | |
11 | 阿閦(あしゅく)種子板碑 | ウーン | 七年忌 | キャー・カー・ラー・バー・アー | 七年忌、常念為、逆修善根 | |
12 | 金剛界大日種子板碑 | ウーン | 十三年忌 | キャク・カク・ラク・バク・アク | 十三年忌、逆修 | 応永二十一年(1414年) |
13 | 胎蔵界大日種子板碑 | アーンク | 三十三年忌 | バン・ウーン・タラーク・キリーク・アク | 三十三年、為逆修善根 | 応永二十年(1413年) |
塩谷(しおたに)十三仏板碑群 現存碑一覧
塩谷(しおたに)十三仏種子板碑群 (県指定文化財、室町時代前期)
⑨.勢至(サク)種子板碑と⑪.阿閦(ウーン)種子板碑に「常念 逆修」と刻まれており、「常念」が生前に自らの供養のため本十三仏板碑を造立したことが分かる。
十三仏信仰は、初七日から三十三回忌に至る十三回の供養仏事に十三の仏・菩薩をわりあてたものであるから本来は追善と
してのものではあるが、十三仏板碑としてはほとんんど、生前に自分自身ために法事を行う逆修(預修)として造立されている。
参考文献:「塩谷の十三仏種子板碑群」(田岡香逸 著 『史迹と美術 335号』・「十三仏信仰と大阪の庚申信仰」(奥村隆彦 著 岩田書院)
*JR播但線 甘地駅前から市川町コミュニティバス(運行は火・金曜日の週二回2便)に乗車、「塩谷バス停」下車 徒歩 約5分。バス停付近に案内標識がある。
(撮影:平成27年11月13日)