澱(よどみ)不動尊 阿弥陀三尊種子自然石塔婆

 澱(よどみ)不動尊(宮城県仙台市青葉区広瀬町8-1)(仙台市史 No:E 2)

  仙台地方で最も古い時期の石塔婆で、鎌倉時代中期 文永十年(1273)の銘がある。宮城県を代表する石塔婆。

阿弥陀三尊種子自然石塔婆 (市指定文化財、鎌倉時代中期 文永十年 1273年、粘板岩、高さ 175Cm 幅 31Cm)

美術館東側の道を北方向へ、澱橋を渡り、右方向に広瀬川沿いの道を約100m歩くと澱(よどみ)不動尊で、その参道に立つ。

石塔婆は、上方 天蓋の下に阿弥陀三尊種子、下方に四句の偈(げ)、願文・紀年銘を刻む。

石塔婆 頭部

頂部が斜めの自然石で、阿弥陀種子「キリーク」の上に天蓋(てんがい)が刻まれ、下に垂れた瓔珞

(ようらく)が華やかな印象を与える。石材は、石巻市を主産地とする「井内石(稲井石)」(粘板岩)が使われている。

石塔婆上方、阿弥陀三尊種子 石塔婆下方、刻銘

三尊種子は、上方に阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左下に勢至菩薩の種子「サク」を蓮座上月輪内に刻む。

下方の刻銘は、上段の前二句を往生要集の出典とする四句の偈(げ)、その下中央に文永十年(1273)の紀年銘、左右に願文が刻まれている。

(前の二句は往生要集)

偈:「念阿弥陀仏(ねんあみだぶつ)、即念一切仏そくねんいっさいぶつ)、所証一心如(しょしょういっしんにょ)、無二無差故(むにむさこ)

[ 阿弥陀を念ずることは、即ち一切の仏を念ずることである、証(あか)す所の一心には、二(ふたつ)なく差別なきが如き故である ]

刻銘:「文永十年、癸酉、八月廿四日、敬白 石塔婆下方、左右の刻銘

刻銘:中央文永十年、癸酉、八月廿四日、敬白、左右右志者、為過去兵衛太郎、滅罪」、「生善、往生極楽、証大菩提也」

兵衛太郎という人物の滅罪と極楽往生を願って文永十年(1273)八月二十四日に造立された。

兵衛太郎は、留守本宗家三代目 留守家広の可能性が高いと考えられている。

蓮座上月輪内に刻まれた阿弥陀種子「キリーク」

仙台市で最も古い時期の石塔婆で、貴重な歴史資料。 現地説明板(部分)

宮城県の石塔婆(板碑)は、旧河北町(現石巻市)の文応元年(1260)を最古とし、数量的には五千基を超え埼玉県、東京都に次いで多い。仙台市の

石塔婆では、太白区の中田柳生(やなぎう)金剛界大日種子石塔婆が文永十年(1273)二月の紀年銘を持ち一番古い。本石塔婆は、同じ文永十年

紀年銘があり、三尊種子を天蓋・瓔珞・月輪・蓮台で荘厳し、偈頌(げじゅ)・願文・紀年銘を刻んだ豪華な石塔婆で、宮城県の代表的石塔婆と言える。

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澱(よどみ)不動尊

 板碑(いたび)

*JR仙台駅前から市バス730系統または739系統乗車、「二高・宮城県美術館前バス停」下車、北方向へ徒歩 約8分。

(撮影:平成22年11月14日)