落合観音堂(おちあいかんのんどう)(宮城県仙台市太白区四郎丸字落合59)
石塔婆群は、もと名取川の河原に並んでいたものを、ここ落合観音堂に移したという。現在、十二基が立っている。
落合観音堂(おちあいかんのんどう)石塔婆群 境内脇壇上 (鎌倉時代後期、安山岩)
落合観音堂(おちあいかんのんどう)石塔婆群 鐘楼前 (鎌倉時代後期、安山岩)
落合観音堂(おちあいかんのんどう)(宮城県仙台市太白区四郎丸字落合59)
阿弥陀種子「キリーク」を主尊とする幅のある石塔婆で、鎌倉時代後期 正安年(1299~1302)の紀年銘がある。
阿弥陀種子石塔婆 (鎌倉時代後期 正安年間 1299~1302年、安山岩、高さ 94Cm 幅 71.2Cm 厚さ 18.8Cm)
鐘楼前に立つ幅広の石塔婆で、石面中央に大きく阿弥陀種子「キリーク」、下方に法華経方便品に出る偈(げ)と紀年銘を刻む。 |
中央に「正安・・・(1299~1302)」、左右に各二行「十方佛土中、唯有一乗法」、「無二亦無三、 除佛方便説」の偈(げ)を刻む。
偈(げ):「十方佛土中(じっぽうぶつどちゅう)唯有一乗法(ゆいういちじょうほう)無二亦無三(むにやくむさん) 除佛方便説(じょぶつほうべんせつ)」
[ 十方の仏土の中には、ただ一乗の法のみあり、二もなく三もなし。仏の方便の説を除く ]
(仙台市史 No:H37-6)
落合観音堂(おちあいかんのんどう)(宮城県仙台市太白区四郎丸字落合59)
百ヶ日忌の追善供養として造立された石塔婆で、阿弥陀種子「キリーク」を主尊とする。紀年銘はないが鎌倉時代後期の作品と推定できる。
落合観音堂 阿弥陀種子石塔婆 (推定:鎌倉時代後期、安山岩、高さ 70Cm 幅 54.6Cm 厚さ 10.5Cm)
碑面を研磨し、中央に阿弥陀如来の種子「キリーク」、下方に願文を刻む。
石塔婆 下部
刻銘は「西願、一百ケ日」とある。
「西願」の百ヶ日忌に造立された。尚、鐘楼前の阿弥陀種子石塔婆(文保元年銘)も同様に百ヶ日忌に造られている。
百ケ日忌の主尊は観音菩薩(種子:「サ」)だが、本碑は十王・十三仏信仰が定着する前の造立で、主尊を阿弥陀種子「キリーク」としている。
落合観音堂(おちあいかんのんどう)(宮城県仙台市太白区四郎丸字落合59)
上部を欠失するが、下方に光明遍照 偈(げ)を含む鎌倉時代後期 延慶三年(1310)の刻銘がある。
阿弥陀種子石塔婆(断碑) (鎌倉時代後期 延慶三年 1310年、安山岩、高さ 70.4Cm 幅 44.2Cm 厚さ 22.4Cm) |
境内脇の壇上に立つ石塔婆で上部を欠失する。石面は、上方に阿弥陀種子「キリーク」の下部を残し、下方に観無量寿経に出る偈(げ)と願文・紀年銘を刻む。
石塔婆 下部
刻銘は、上段に観無量寿経に出る偈(げ)「光明遍照、十方世界、念佛衆生、摂取不捨」、
下段中央に「延文三年(1310)二月」、左右に各二行「右造立者、口之・・・」、「霊屋・・・、全・・・・」の刻銘がある。
偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念佛衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)」
[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]
落合観音堂(おちあいかんのんどう)石塔婆群(宮城県仙台市太白区四郎丸字落合59)
前出以外の石塔婆で、地蔵種子「カ」と大日種子「ア」を主尊とする二基を省略する五基。
阿弥陀種子石塔婆(仙台市史 No:I 37-3) | 阿閦(あしゅく)種子石塔婆(仙台市史 No:I 37-4) | |
紀年銘なし、安山岩、高さ 51Cm 幅 37.6Cm | 紀年銘なし、安山岩、高さ 83Cm 幅 54.8Cm | |
種子:「キリーク」(阿弥陀如来) | 種子:「ウーン」(阿閦如来) |
金剛界大日種子石塔婆(推定:鎌倉時代後期、安山岩、高さ 62Cm 幅 41Cm 厚さ 19Cm)
碑面を研磨し、中央に金剛界大日如来の種子「バン」を薬研彫する。(仙台市史 No:I 37-5)
胎蔵界大日種子石塔婆(仙台市史 No:I 37-7) | 釈迦種子石塔婆(仙台市史 No:I 37-9) | |
紀年銘なし、安山岩、高さ 98.5Cm 幅 72.4Cm | 紀年銘なし、安山岩、高さ 62.4Cm 幅 41.6Cm | |
種子:「ア」(胎蔵界大日如来) | 種子:「バク」(釈迦) |
本石塔婆群十二基の主尊種子は、阿弥陀種子「キリーク」が半数を占める六基で最多、次に胎蔵界大日種子「ア」が二基、他の四基は異なる種子を刻んでいる。
落合観音堂 古碑群(石塔婆群)
観音堂は、名取川右岸の堤防下に位置する。古碑群は、もと河原に並んでいたものを堤防工事の際、ここに移したという。
*東北本線 南仙台駅東口から仙台市バス 四郎丸行きに乗車、「袋原落合ポンプ場前バス停」下車、東方向へ徒歩 約150m。
(撮影:平成25年10月10日)