童子川稲荷社 両部曼荼羅種子石塔婆

 童子川稲荷社(どうしがわいなりしゃ)(宮城県大崎市古川休塚字童子川)

   金胎両部曼荼羅を表現した大崎市で最大の石塔婆で、鎌倉時代後期 延慶四年(1311)の紀年銘がある。

童子川稲荷社 両部曼荼羅種子石塔婆(市指定文化財、鎌倉時代後期 延慶四年 1311年、粘板岩、高さ 275.5Cm 幅 88Cm)

神社内最奥、祠の西側に立つ。身部上方は、金剛界曼荼羅 成身会 と 胎蔵界曼荼羅 中台八葉院を種子で表現する。

下方は、中央に「延慶四年(1311)」の紀年銘、その左右に各二行 出典未詳の偈(げ)、下側に造立者名と願文を刻んでいる。

石塔婆、頂部

頂部は水平、身部の輪郭はない。

石塔婆上部、両部曼荼羅 石塔婆下部、刻銘全文

石塔婆下部の刻銘は、中央に「延慶四年(1311)辛亥三月日」、その左右に各二行「出典未詳の偈(げ)」

下方に「宗阿弥陀仏、禅光比丘尼」、「為往生極楽、敬逆修善也」と刻む。

金剛界(こんごうかい)曼荼羅の中核部、成身会(じょうじんえ)(種子は、下記の通り)

阿弥陀如来の種子「キリーク」
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宝生如来の種子「タラーク」 金剛界大日如来の種子「バン」 不空成就如来の種子「アク」 
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阿閦(あしゅく)如来の種子「ウーン」

大月輪の中、中央月輪内に金剛界大日如来、上下左右に金剛界四仏の種子を小月輪内に刻む。方向は、上方が西で向かって右が北。

胎蔵界曼荼羅 中台八葉院(種子は、下記の通り)

弥勒菩薩の種子「ユ」 - - 宝幢如来の種子「ア」 - - 普賢菩薩の種子「アン」
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天鼓雷音の種子「アク」 - - 胎蔵界大日如来の種子「アーク」 - 開敷華王の種子「アー」
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観自在菩薩の種子「ボ」 - - 無量寿の種子「アン」 - - 文殊菩薩の種子「ア」

中央の大日如来四如来(黄文字色)四菩薩(青文字色)

大月輪の中、中央月輪内に胎蔵界大日如来、上下左右に胎蔵界四仏の種子、胎蔵界四仏の間に四菩薩の種子を小月輪内に刻む。

方向は、上方が東で向かって左が北。(胎蔵界曼荼羅は、金剛界曼荼羅と逆方向)

両界曼荼羅の作品は植木観音堂曼荼羅 石塔婆(福岡県直方市)や来迎寺両部曼荼羅板碑(京都府向日市)等がある。

一基で金胎両部曼荼羅を表現する石塔婆は極めて珍しい。 刻銘:「延慶四年(1311)辛亥」

出典未詳の偈(げ)

偈(げ):「十念成就(じゅうねんじょうじゅ)、順次決定(じゅんじけつじょう)」、「臨終正念(りんじゅうしょうねん)、往生極楽(おうじょうごくらく)

[ 十念(十声の念仏)成就すれば、順次に決定(けつじょう)し、臨終にあたり邪念を抱かず正念すれば、極楽に往生せん。]

石塔婆刻銘、最下部

向って右側に二行「宗阿弥陀仏、禅光比丘尼」、左側に二行「為往生極楽、敬逆修善也」と刻む。

夫婦二人が来世の極楽往生を願って、生前に法要を営む「逆修供養」として造立された。男性の方は法名に阿弥陀仏号がついている。

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童子川稲荷社(どうしがわいなりしゃ)

小さな祠が建つ神社、一番奥に本石塔婆が立っている。

 板碑(いたび)

*JR陸羽東線 古川駅前からミヤコーバス古川線 栗原中央病院行きに乗車、「後田バス停」下車、北東方向へ徒歩 約8分。

(撮影:平成26年4月14日)