多福院 山門脇阿弥陀種子石塔婆

 多福院(たふくいん)山門脇 本堂側 石塔婆群 (宮城県石巻市吉野町1-4-9)

  主尊種子「キリーク」、その月輪の内側に珍しい五秘密真言を刻む石塔婆で、室町時代前期 応永九年(1402)の紀年銘がある。

多福院 阿弥陀種子石塔婆(市指定文化財、室町時代前期 応永九年 1402年、粘板岩、高さ 72Cm 幅 37Cm)

身部は、上方月輪内に阿弥陀種子、その月輪の内側に沿って梵字「五秘密真言」、下方は造立趣旨及び紀年銘を刻む。

碑面上方、主尊種子「キリーク」

月輪内に阿弥陀如来の種子「キリーク」を薬研彫する。

さらに、月輪内側の下方、六時の方向から時計回りに梵字「五秘密真言」刻む。

五秘密真言:「オン、マ、カー、ソ、キャ、バ、ザフ、サ、トバ、ジャク、ウーン、バン、コク、ソ、ラ、ダ、サトバン」

石塔婆下方、刻銘

下方中央に「應口口年(1402)、壬口、十月廿二日、施主、敬白の紀年銘、

その両側に各二行「右志趣者相当道吉、禅門七分全得」、「得成此恵葉、乃至法界平等利益」と刻んでいる。

刻銘:應口口年(1402)、壬午、十月 年号は、應の字、欠損の文字数、干支から、「應永九年」と読む。

多福院 山門脇胎蔵界大日種子石塔婆

 多福院(たふくいん)山門脇 本堂側 石塔婆群 (宮城県石巻市吉野町1-4-9)

  妙性禅尼 七回忌供養の石塔婆で、室町時代前期 応永十年(1403)の紀年銘がある。

多福院 胎蔵界大日種子石塔婆(市指定文化財、室町時代前期 応永十年 1403年、粘板岩、高さ 57Cm 幅 24Cm)

石塔婆は上部を欠損し、種子「アーク」の下方を残す、その下に梵字光明真言、下方に紀年銘と造立趣旨を刻む。

下方の刻銘は、中央に「右志者 應永十年(1403)五月日、教口、敬口の紀年銘、

その両側に「相当妙性禅尼七年忌、乃至法界衆生平等利益也」と刻んでいる。

[ 妙性禅尼七回忌の供養の為、室町時代前期 応永十年(1403)五月に造立された。]

碑面上方、主尊種子「アーク」

胎蔵界大日如来の種子「アーク」を薬研彫する。

造立趣旨に妙性禅尼七年忌とあり、七回忌の本尊として胎蔵界大日「アーク」が刻まれている。

七回忌の本尊は、阿閦(あしゅく)如来だが、十三仏信仰として定型化する前は、胎蔵界大日種子「アーク」が多い。

光明真言 (梵字)

光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ」、「シャナ、マ、カーボ、ダラ」、「マ、ニ、ハンドマ、ジンバ、ラ」、「ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン、ダ」

多福院 山門脇虚空蔵種子石塔婆

 多福院(たふくいん)山門脇 本堂側 石塔婆群 (宮城県石巻市吉野町1-4-9)

  虚空蔵種子を本尊とする三十三回忌供養の石塔婆で、室町時代前期 応永七年(1400)の紀年銘がある。

多福院 虚空蔵種子石塔婆(市指定文化財、室町時代前期 応永七年 1400年、粘板岩、高さ 50Cm 幅 26Cm)

上部を欠損、月輪内に種子「タラーク」の下方を残す。下方は、金剛界五仏、大日報身・法身真言を梵字で、その下に紀年銘・造立趣旨を刻む。

碑面上方、主尊種子「タラーク」

月輪内に三十三回忌の本尊 虚空蔵菩薩の種子「タラーク」を薬研彫する。

石塔婆下方、刻銘

種子の下、中央に「バン(金剛界大日)、ウーン(阿閦)、タラーク(宝生)、キリーク(阿弥陀)、アク(不空成就)の金剛界五仏を上から下に、

向って右に大日報身真言「ア、ビ、ラ、ウーン、ケン」、左に大日法身真言「ア、バン、ラン、カン、ケン」を下から上に刻んでいる。

下方の刻銘は半分が地中で、中央に「右志者為 應永七年(1400)六月日、孝子、敬白の紀年銘、

その両側に「慈母幽儀卅三廻之忌景、乃至法界衆生平等利益也」と刻んでいる。

[ 亡き母 三十三回忌供養の為、子供等が室町時代前期の応永七年(1400)六月に造立した。]

※ 多福院と慈恩院の石塔婆(当HP,掲載分) 時代別一覧

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多福院(たふくいん)山門脇 本堂側石塔婆群 (市指定文化財、鎌倉時代後期~室町時代、粘板岩)

阿弥陀種子石塔婆が、前列の向って左から三基目、他は後列に立っている。

 板碑(いたび)

*JR石巻線・仙石線 「石巻駅」下車、南東方向へ徒歩 約1.6Km。

(撮影:平成26年4月10日)