多福院 草刈山元徳三年銘種子石塔婆

 多福院(たふくいん)草刈山石塔婆群 後列 (宮城県石巻市吉野町1-4-9)

   阿閦(あしゅく)種子を主尊とする石塔婆で、鎌倉時代後期 元徳三年(1331)の紀年銘がある。

多福院(たふくいん)阿閦種子石塔婆(市指定文化財、鎌倉時代後期 元徳三年 1331年、粘板岩、高さ 213Cm 幅 43.5Cm)

多福院の東に位置する御所入草刈山(ごしょのいりくさかりやま)から移転された十六基石塔婆の一基で、本堂の裏側に安置されている。

後列、向って左端に立つ石塔婆で、身部は、上方に阿閦(あしゅく)種子「ウーン」、下方は造立趣旨及び紀年銘を刻む。

石塔婆下方の刻銘は、中央に「右為 元徳参年(1331)八月廿一日施意敬白の紀年銘、

左右に安養寺殿大禅定門第三周所造立也、仍之頓出四生早証仏之菩提而口」と刻んでいる。

阿閦(あしゅく)如来の種子「ウーン」 石塔婆下方、刻銘(全文)

主尊種子は「ウーン」と思われるが、下に挙げた「コローン(尊勝仏頂)」かもしれない。

月輪の最下部(六時の位置)、コローン(尊勝仏頂)

大野弥勒磨崖仏(奈良県宇陀市)の左側下方に刻まれた尊勝曼荼羅(鎌倉時代前期)

尊勝曼荼羅は、滅罪・延命・出産・祈雨などを目的として修される尊勝法の本尊。

刻銘:元徳参年(1331)八月」 刻銘:安養寺殿大禅定門

多福院 草刈山勢至種子石塔婆

 多福院(たふくいん)草刈山石塔婆群 後列 (宮城県石巻市吉野町1-4-9)

   勢至種子「サク」を主尊とする石塔婆で円覚経に出る偈(げ)と造立者として「平朝臣 沙弥充願」の名を刻む。

多福院(たふくいん)勢至種子石塔婆 (市指定文化財、紀年銘なし、粘板岩、高さ 231Cm 幅 42Cm 厚さ 25Cm)

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角塔婆風の外観。身部は、上方に勢至種子「サク」、その下に円覚経に出る偈(げ)、下方は造立者名を刻む。紀年銘はない。

碑面上方、主尊種子「サク」

勢至菩薩の種子「サク」を薬研彫する。

刻銘:奉造立、平朝臣、沙弥充願、敬白」 円覚経に出る偈(げ)

円覚経に出る偈(げ)

偈(げ):「地獄天宮(じごくてんぐう)皆為浄土(かいいじょうど)有性無性(うしょうむしょう)斉成仏道(さいじょうぶつどう)

[ 地獄も天宮(てんぐう)も皆浄土なり、仏性あるも無きも、ひとしく仏道を成ずる ]

碑面下方、造立者名

刻銘は、向って右に平朝臣、左に沙弥充願」、下中央に「敬白」

平朝臣は、「平」を氏とする氏族で、姓(かばね)は朝臣。

※ 多福院と慈恩院の石塔婆(当HP,掲載分) 時代別一覧

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多福院(たふくいん)草刈山 石塔婆群

元徳三年(1331)銘石塔婆は、後列、向って左端。

 板碑(いたび)

*JR石巻線・仙石線 「石巻駅」下車、南東方向へ徒歩 約1.6Km。

(撮影:平成26年4月10日)