地蔵立像板碑(兵庫県赤穂市有年楢原379)
板碑は、舟形を彫りくぼめた中に地蔵立像が半肉に刻まれている。南北朝時代中期 延文三年(1358)の造立。
有年楢原 地蔵板碑 (県指定文化財、南北朝時代中期 延文三年 1358年、花崗岩、高さ 175Cm 幅 165Cm)
頭部を山形風に加工、身部は上方中央に舟形を彫りくぼめ地蔵菩薩像を半肉彫り、左右に地蔵本願経に出る偈(げ)と紀年銘を刻む。
地蔵菩薩〈像高 66Cm) は、舟形光背を負い、右手に錫杖、左手に宝珠を持ち蓮華座に立つ。納衣は直下し、衣紋も細かく彫っている。 |
隣接する上郡町にも同じ南北朝時代に造立された鍛冶(かじ)地蔵像板碑 や鍛冶口(かじぐち)地蔵像板碑など、地蔵を彫った優れた板碑が見られる。
地蔵像 上部
お顔は、大きく面長。
板碑、 向かって左側 | 板碑、向かって右側 |
地蔵像の左右に地蔵本願経に出る偈(げ)「現在未来天人衆、吾今慇懃付属汝、以大神通方便□、勿令堕在諸悪□」
と「延文三年(1358)、戊戌、三月日、願主等、敬白」の刻銘があるというが、摩耗・風化のため読めない。
地蔵本願経に出る偈(げ)
偈(げ):「現在未来天人衆(げんざいみらいてんにんしゅう)吾今慇懃付属汝(ごこんいんぎんふしょくにょ)
以大神通方便力(いだいじんづうほうべんりき)勿令堕在諸悪趣(もつりょうだざいしょあくしゅ)」
[ 現在未来の天界・人界の衆よ、われ今ねんごろに汝に付属し、大神通(だいじんづう)の方便を以てすくわん。諸々の悪趣に(人々)をおとしむるなかれ ]
尚、日本石造美術事典(川勝政太郎 著)には、本偈の作品例として、この地蔵板碑が掲載されている。
地蔵 蓮華座
現地説明板
有年楢原(うねならばら) 宝篋印塔
板碑の向かって左の山裾に立つ宝篋印塔で、作風は南北朝時代風。塔身には金剛界四仏の種子が刻まれている。
有年楢原(うねならばら)地蔵板碑 覆屋
*JR山陽本線「有年駅」下車、北西方向へ徒歩 約30分。有年(うね)考古館の前を西方向に向かって歩き、千種川を越えて突き当たりを右折、次の三叉路の左側に覆屋が見える。板碑はその中に安置されている。
(撮影:平成27年11月5日)