中別所(なかべっしょ)一尊種子石塔婆(弘前市史 No:弘前98)

 中別所(なかべっしょ)石塔婆群・石仏(いしぼとけ) [青森県弘前市中別所字葛野(くずの)]

   種子「オン」を主尊とする珍しい石塔婆で、本県板碑消滅期にあたる室町時代 前期 応永年間の造立。

中別所 一尊種子石塔婆 (室町時代前期 応永四年 1397年、安山岩、高さ 77Cm 幅 75Cm 厚さ 19Cm)

石面中央に種子「オン」を薬研彫し、種子の左右に願文と紀年銘、その両側に涅槃経に出る「諸行無常の偈(げ)」を刻む。

刻銘:「口口果口口口三界、仏 応永四(1397)九月日」、「諸行無常是生滅法、生滅々已寂滅為楽」

「オン」:「オーン」とも。唵(おん)と音写する。聖音。陀羅尼を誦するときに、初めに唱えるものである。インドでは、宗教的儀式の前後に唱える神聖な音であった。

オンは、a・u・mの三字による合成であるとし、それぞれが万物の発生・維持・終滅を示すものと解された。真言密教に入って神聖な呪語となり、たとえば『守護国界

主陀羅尼経』第一には、それを法・報・応の三身(さんじん)に配し、三世の五仏(金剛界五仏)は、この字を観じて成仏するという。(「仏教美術辞典」、東京書籍、部分)

石塔婆 中央

種子「オン」を薬研彫する。

種子「オン」は、金剛界大日如来、阿弥陀曼荼羅中央尊の阿弥陀、理趣会曼荼羅中央尊の金剛薩埵として知られる。

当市 乳井(にゅうい)神社 境内の石塔婆や鹿児島県霧島市の沢家墓地(さわけぼち)板碑群に種子「オン」を刻む板碑がある。

諸行無常   是生滅法   生滅々已   寂滅為楽

涅槃経に出る偈(げ)

(げ):「諸行無常(しょぎょうむじょう)是生滅法(ぜしょうめっぽう)」「生滅々已(しょうめつめつい)寂滅為楽(じゃくめついらく)

[ 諸行は無常である。これ生滅の法である。生滅を滅しおわりて、生も滅もない寂滅を楽しみとする。]

刻銘:應永四年(1397)九月日 青森県の石塔婆は、応永年間を下限としており、消滅期の造立にあたる。

※ 中別所(なかべっしょ)石塔婆群 掲載分一覧

 中別所 弘安十年銘 金剛界大日種子石塔婆                   石仏と石塔-目次!

中別所(なかべっしょ)石塔婆群(石仏)

中央手前が、本石塔婆 (弘前市史 No:弘前98)

 板碑(いたび)

*JR 弘前駅前から弘南バス 弘前~船沢・三ツ森線、または弘前~弥生・新岡・葛原線に乗車、「折笠バス停」下車、北東方向へ約1.7Km。

(撮影:平成25年10月13日)