岩屋寺(いわやじ)笠塔婆

 岩屋寺(いわやじ)(山口県周南市下上岩屋)

  塔身の四面に種子、正面に地蔵菩薩立像を刻む笠塔婆で、南北朝時代前期 貞和三年(1347)の紀年銘がある。

岩屋寺(いわやじ)笠塔婆 (市指定文化財、南北朝時代前期 貞和三年 1347年、安山岩、笠上迄の高さ 156Cm)

正面、塔身上方に阿弥陀三尊種子、下方に地蔵菩薩立像、その左右に「願主 良口」、「貞和三年(1347)、丁亥、七月十五日」と刻む。

三尊種子は、上方に大きく阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左に勢至菩薩の種子「サク」を蓮座なしに直接刻む。

笠塔婆は、頂部の宝珠を欠失し一石五輪塔の上部を載せる。もと、当寺の南方 丸山共同墓地から昭和53年に発見され、修復後岩屋寺境内に移された。

正面、下方の「地蔵菩薩立像」 刻銘:「貞和三年(1347)

正面下方に、踏み割り蓮座上に立ち、やや左側に身体を傾けた像高52Cmの地蔵菩薩が刻まれている。地蔵は、頭光を負い右手に錫杖、左手に宝珠を持つ。

地蔵像の向って右下方に「願主 良口」、左に「貞和三年(1347)、丁亥、七月十五日」の刻銘がある。

岩屋寺(いわやじ)笠塔婆 北面(向って左側面)

塔身北面は、上方に釈迦如来の種子「バク」を薬研彫し、下方に観無量寿経に出る光明遍照偈(げ)を二行で刻む。

塔身北面、上方に釈迦如来の種子「バク」を刻む。 北面下方、観無量寿経に出る偈(げ)

偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念仏衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)

[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]

請花・宝珠

笠上の宝珠は欠失し、一石五輪塔の上部と思われる別物が載っている。

塔身背面(東面)、上方に薬師如来の種子「バイ」を刻む。 東面の刻銘:「為法界衆生 敬白」

塔身背面(東面)は、上方に薬師如来の種子「バイ」を薬研彫し、下方に一行「為法界衆生 敬白」と刻む。

発見当時塔身に載っていた笠は別物で、近くにあった笠の枘穴が塔身に合い、これを一具のものとして載せたという。

笠塔婆南面、上方に観音菩薩の種子「サ」、下方に偈を刻む。 南面下方、法華経 方便品に出る偈(げ)

塔身南面(向って右側面)は、上方に観音菩薩の種子「サ」を薬研彫し、下方に二行「法華経 方便品」に出る偈(げ)を刻む。

偈(げ):「乃至童子戯(ないしどうじげ)聚沙為仏塔(じゅしゃいぶっとう)」、「如是諸人等(にょぜしょにんとう)皆已成仏道(かいいじょうぶつどう)

[ 子供達が遊戯の際、砂を集めて仏塔をつくる。これらの人々は、すべて「さとり」に到達するであろう ]

塔身、南面上部

観音菩薩の種子「サ」を薬研彫する。

岩屋寺(いわやじ)笠塔婆 (市指定文化財、南北朝時代前期 貞和三年 1347年)

下方で二分断されていたが、修理が施され美しい姿を見せている。

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岩屋寺(いわやじ)(真言宗御室派)

地元では「お大師さん」と呼ばれ親しまれている。

 笠塔婆(かさとうば)

*JR山陽本線 新南陽駅前より防長バス 四熊・鹿野方面行きに乗車、「徳善バス停」下車、西方向へ徒歩 約10分。

(撮影:平成26年 3月12日)