熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)(和歌山県新宮市新宮1番地)

   阿弥陀種子「キリーク」を主尊とする本州南限の板碑で、鎌倉時代後期の特長を備えている。

熊野速玉(くまのはやたま)大社 阿弥陀種子板碑(中央) (鎌倉時代後期、花崗斑岩、地上高 60Cm 幅 24Cm)

もと神倉山にあった板碑で、いまは速玉大社社務所(大礼殿) 南側通路の横に立っている。身部は、阿弥陀種子「キリーク」を蓮座上に刻む。

神倉山は、熊野三所権現が最初に降臨した元宮で「旧宮」と呼ばれ、現在の鎮座地(熊野速玉大社)に遷座して「新宮」と号されている。

板碑 頭部

頭部山形はやや低く、下の切込は一段、額部は薄く突出する。

身部は、蓮座上月輪内に阿弥陀如来の種子「キリーク」を薬研彫する。蓮座と月輪は、周辺を薄く彫り込み薄肉に仕上げている。

本地仏との関係からは、種子「キリーク」は阿弥陀如来と確定するには微妙で、「キリーク」は「千手観音」・「如意輪観音」・「大威徳明王」等を指す場合もある。

熊野速玉大社は、熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)(本地仏:薬師如来)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)(本地仏:千手観音)を主祭神とする。

その他 上記の主祭神の他に、家津美御子大神(本地仏:阿弥陀如来)、天照大神(本地仏:十一面観音)、高倉下命(本地仏:愛染明王 ?)、天忍穂耳尊(本地仏:地蔵

菩薩)、ににぎの尊(本地仏:龍樹菩薩)、彦火火出見尊(本地仏:如意輪観音)、うが草葺不合命(本地仏:聖観音)、国狭槌尊(本地仏:文殊菩薩)、豊斟渟尊(本地仏:

普賢菩薩)、泥土煮尊(本地仏:釈迦如来)、大戸道尊(本地仏:不動明王)、面足尊(本地仏:多聞天:毘沙門天)を祀っている。口口口口口口口口口口口口口口口口口

昭和31年から昭和32年にかけて、神倉山のゴトビキ岩近くの窟など三ヶ所、庵主池 二ヶ所、如法堂 六ヶ所から多数の仏教遺物が発見されている。その内仏像は

計七十九体で内訳は、薬師 二十二体、愛染 二十一体、千手観音 五体、十一面観音・地蔵・阿弥陀 各四体、毘沙門天 三体、如意輪・観音・大威徳・不動 各二体

迦・勢至・文殊・龍樹・馬頭・多宝・熊野三所の本地 各一体となっている。特に速玉社近くの庵主池から速玉社の本地仏 薬師、神倉からはその本地仏

が数く発見されている。その他の諸仏の多くも十二社権現の本地仏である。( 引用:「修験道」 宮家 準 著、教育社歴史新書)口口口口口口.・口口口口口

身部下方

下方に刻銘はない。また、根部は粗く削ったままで加工せず、土中に埋没しているという。

小型ながら本州南限の板碑で、熊野信仰の板碑としても有名。 板碑、側 背面。背面を船底形に粗削りのまま残す。

二基並んで立つ板碑

向って左は、梵字「ア」を主尊とする南北朝時代中期 応安年(1368~75)銘の板碑。

熊野速玉大社 拝殿

拝殿の後、向って左から右に、結宮、速玉社、上三殿、中四社、下四社の計十三社が祀られている。

熊野速玉大社

拝殿の後に計十三社が祀られており、境内は世界遺産に登録されている。

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熊野速玉大社 神門

表参道から来れば、この門に出る。板碑は、神門の向って左にある大礼殿(社務所)手前の小道を入ると左側に立っている。

 板碑(いたび)

*JR紀勢本線「新宮駅」下車、北西方向へ 徒歩約15分。

(撮影:平成25年8月2日)