やぶの中三尊磨崖仏(京都府木津川市加茂町東小上東谷)
浄瑠璃寺から岩船寺の方向へ、少し歩くと右手の藪の中にあらわれる。当尾(とうの)の石仏群で最古の年号を持つ。
やぶの中三尊(鎌倉時代中期 弘長二年 1262年、花崗岩、地蔵 高さ 196Cm 像高153Cm)
銘文:東小田原西谷浄土院 弘長二年(1262) 大工 橘安縄 小工 平貞末
阿弥陀如来坐像(左、像高111Cm) | 地蔵菩薩立像(正面中央、像高 153Cm) | 十一面観音立像(右、像高 113Cm) |
右手に錫杖・左手に宝珠を持つ通有の地蔵菩薩を中尊として、向かって左に阿弥陀如来坐像、向かって右に錫杖を持った長谷型十一面観音立像が刻まれている
中尊(地蔵菩薩)の左側に長い銘文が刻まれている | 中尊は、もと西谷浄土院という塔頭の本尊で、御倉地蔵とも呼ばれる |
銘文は上に一行「東小田原西谷浄土院」、下に三行「弘長二年(1262)壬戌四月廿四日刻彫畢大工橘安縄小工平貞末」
「願主沙弥浄法比丘尼善阿弥陀仏千手女僧戒万」「与力衆僧戒力僧増願久縁清太郎僧良増」と刻まれている。
銘文の東小田原は、ここの地名で現在も東小(ひがしお)と呼ばれている。願主浄法ら僧・俗九名により、鎌倉中期の弘長二年(1262)に造立された。
阿弥陀如来坐像
舟形を彫りくぼめ、蓮華座に坐す定印阿弥陀如来を厚肉彫りする。阿弥陀は、別岩で南面に刻まれる。
「大工橘安縄小工平貞末」の銘文(右列) | 「弘長二年(1262)壬戌四月廿四日刻」の紀年銘(右列) |
銘文にある弘長二年(1262)は、当尾(とうの)地域の石仏群で最古の年号。作者の石大工「橘安縄」と弟子の「平貞末」の名前も刻まれている。
十一面観音は、右手に錫杖、左手に花瓶を持った、大和長谷寺(はせでら)の本尊を写した長谷型で、柔らかな表情が魅力的な秀作 |
地蔵菩薩の額に、白毫がはめられていたあとが残る | 阿弥陀坐像のお顔には、白毫が陽刻されている |
*JR・近鉄奈良駅より奈良交通バス乗車、「浄瑠璃寺」下車、徒歩。
(撮影:平成19年5月27日、平成22年9月7日)