安蒜家 正和三年銘 阿弥陀三尊種子板碑

 安蒜家(あんびるけ)阿弥陀三尊種子板碑(千葉県流山市西深井261)

   東葛地域を代表する武蔵型板碑で、碑面に阿弥陀三尊種子と光明真言を刻んでいる。鎌倉時代後期 正和三年(1314)の紀年銘がある。

安蒜家 阿弥陀三尊種子板碑(中央)(県指定文化財、鎌倉時代後期 正和三年 1314年、緑泥片岩、高さ 124Cm 下幅 31Cm)

身部は二重線の輪郭を巻き、上方に阿弥陀三尊の種子を蓮座上に、下方は中央に紀年銘、左右に各二行 梵字光明真言を刻む。

板碑 頭部

頭部 山形、下に二段の切込、身部は二重線の輪郭を巻く。

身部上方、蓮座上に「阿弥陀三尊」の種子を刻む 身部、下方の刻銘

阿弥陀三尊種子は、上方に阿弥陀如来の種子「キリーク」を荘厳体で、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左に勢至菩薩の種子「サク」を刻む。

三尊とも月輪なしに、蓮座上に刻まれている。

下方の刻銘は、中央に「正和三(1314)八月十七日 口覚、口口、左右に各二行「梵字 光明真言」を刻む。

光 明 真 言

光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ」「シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ」 「マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ」「ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」

光明真言は、「不空羂寂毘廬舎那仏大灌頂光明真言経(ふくうけんじゃくびるしゃなぶつだいかんちょうこうみょうしんごんきょう)」に出る陀羅尼で、

光明真言を誦(じゅ)して土砂を加持し、それを遺体に散ずれば、罪障を除き西方極楽浄土に往生できると説かれている。

刻銘:「正和三(1314)八月」 光明真言の代わりに、「光明遍照 偈(げ)」を刻んだものも多い。

「板碑の総合研究(2)地域編」(坂詰秀一 編、柏書房)の千葉県 地域別分布表によると流山市を含む東葛地域の板碑は、武蔵型板碑が638基を数え、下総

型板碑はわずか1基のみとなっており、当地域は武蔵型板碑文化圏といえる。ちなみに同表による香取地域は武蔵型板碑がわずか1基で、下総型板碑が

607基を数えている。又、「千葉縣史料 金石文篇 二」(千葉県史料調査会)では、流山市の板碑 八十二基を挙げているがすべて武蔵型板碑となっている。.

 安蒜家 元亨二年銘 阿弥陀三尊種子板碑                      石仏と石塔-目次!

安蒜家 阿弥陀三尊種子板碑(二基)(県指定文化財、緑泥片岩)

向って左側が本板碑、右側は元亨二年(1322)の紀年銘がある。

 板碑(いたび)

*東武野田線 「運河駅」 下車、南西方向へ徒歩 約18分。板碑は、西深井小学校の北側道路に隣接する安蒜家(あんびるけ)墓地に立っている。

(撮影:平成25年3月10日)