知足院(ちそくいん)(千葉県香取市本矢作1012-1)
碑面中央に阿弥陀種子、左右に十仏を刻んだ下総板碑で、南北朝時代中期 延文三年(1358)の紀年銘がある。
知足院 阿弥陀・十仏 種子板碑 (南北朝時代中期 延文三年 1358年、黒雲母片岩、高さ 128Cm 幅 71Cm)
身部は、中央に大きく阿弥陀種子、上方に「キャ・カ・ラ・バ・ア」の梵字、左右に各五仏 計十仏の種子、下方に偈・願文・紀年銘を刻む。 |
板碑 頭部
頭部は緩い山形、下に二条線、その下に五大四門の梵字 東方発心門「キャ・カ・ラ・バ・ア」を月輪内に刻む。
身部中央
中央に阿弥陀如来の種子「キリーク」を大きく刻み、瓔珞(ようらく)のついた天蓋(てんがい)と蓮台で荘厳する。
阿弥陀種子の向って右、上から縦に①.不動(カーン)、②.釈迦(バク)、③.文殊(マン)、④.普賢(アン)、⑤.地蔵(カ)。
阿弥陀種子に向って左、上から縦に⑥..弥勒(ユ)、⑦.薬師(バイ)、⑧.観音(サ)、⑨.勢至(サク)、⑩.阿弥陀(キリーク)。
以上、左右に各五仏、計十仏を刻んでいる。十仏は、死者の追善供養のために①.初七日(不動)、②.二七日(釈迦)、
③.三七日(文殊)、④.四七日(普賢)、⑤.五七日(地蔵)、⑥.六七日(弥勒)、⑦.七七日(薬師)、⑧.百ヶ日(観音)、
⑨.一周忌(勢至)、⑩.三回忌(阿弥陀)の十仏事にわりあてられた仏・菩薩をいう。(○内数字は、十仏の順序)・・
十仏は、閻魔王など十王の本地仏を、初七日(不動)から三回忌(阿弥陀)までに当てたもので、十仏信仰が室町時代以降流行した十三仏信仰に繋がっていく。
身部下方の刻銘
向って右から「光明遍照十方世界、念佛衆生摂取不捨、右造立旨趣者為、平氏女七分全得、口口口心依此作、
口口口口口口口、口口生九品浄利、乃至法界普利也、延文三年(1358)、戊戌、十一月廿七日、口施主敬白」と刻む。
観無量寿経に出る偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念仏衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)」
[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]
知足院 板碑群
境内に立つ五基の下総板碑
知足院 宝篋印塔
門前に立っている。
知足院 (真言宗豊山派)
*JR成田線「佐原駅」下車、南方向へ約7Km。JR佐原駅前にレンタサイクルがあるので、便利に利用できる。
(撮影:平成25年3月12日)