地蔵院(じぞういん)(千葉県香取市新市場87)
下総板碑の代表的二連板碑で、各々に五大四門の梵字や偈(げ)を刻んだ格調の高い板碑。鎌倉時代後期 乾元二年(1303)の紀年銘がある。
地蔵院(じぞういん)大日種子二連板碑 (鎌倉時代後期 乾元二年 1303年、黒雲母片岩、高さ 181Cm 幅 80Cm)
一枚石に板碑形を二基刻んだ形状で、向って右は金剛界大日、左は胎蔵界大日を主尊とする。板碑形間に銘文、下方に各々偈を刻む。 |
板碑 頭部
各々、頭部山形の線刻、下に二条線、その下向って右に五大四門の梵字 西方菩提門
「ケン・カン・ラン・バン・アン」、左に北方涅槃門「キャク・カク・ラク・バク・アク」を横書きで刻む。
連碑、向って左側、胎蔵界大日の種子「アーク」 | 連碑、向って右側、金剛界大日の種子「バン」 |
各々の主尊種子は、五大四門の梵字や長い瓔珞(ようらく)のついた天蓋、豪華な蓮台等で荘厳する。
主尊種子間の境界線を挟んで左右に各一行、「右志者為慈父得有悲母相当一周忌之忌景往生極楽」
「乃至法界平等利益 乾元二暦(1303)仲呂 中臣家真、敬白」と刻む。
[ 中臣家真が、乾元二年(1303)陰暦四月 亡き父母一周忌の法要を行い、極楽往生を祈願した。]
板碑、下方
向って右側 金剛界大日種子「バン」の下に観無量寿経に出る偈(げ)、左側 胎蔵界大日種子「アーク」の下に涅槃経に出る偈(げ)を刻む。
観無量寿経に出る偈(げ):「光明遍照、十方世界、念仏衆生、摂取不捨」
涅槃経に出る偈(げ) : 「諸行無常、是生滅法、生滅々已、寂滅為楽」
観無量寿経に出る偈(げ)
偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念仏衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)」
[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]
涅槃経に出る偈(げ)
偈(げ):「諸行無常(しょぎょうむじょう)、是生滅法(ぜしょうめっぽう)、生滅々已(しょうめつめつい)、寂滅為楽(じゃくめついらく)」
[ 諸行は無常である。これ生滅の法である。生滅を滅しおわりて、生も滅もない寂滅を楽しみとする。]
刻銘:「乾元第二暦(1303)仲呂(四月)」 | 下総板碑特有の立派な天蓋と台座で荘厳している。 |
連碑 下方
中央に紀年銘と願文・造立者名、左右に各々偈(げ)が刻まれている。
地蔵院(じぞういん)(真言宗豊山派)
*JR成田線 佐原駅前から千葉交通バス 県立病院・香取神宮・神里経由小見川行きに乗車、「香取神宮バス停」下車 南方向へ約500m。
(撮影:平成25年3月13日)