大英寺(だいえいじ)(埼玉県加須市騎西1404)
阿弥陀種子を主尊とし、両側面にも光明真言の後半や種子・偈を刻む鎌倉時代中期 文永十二年(1275)銘の板碑。
大英寺 阿弥陀種子板碑(中央)(市指定文化財、鎌倉時代中期 文永十二年 1275年、緑泥片岩、高さ 181Cm 下幅 43Cm)
大形板碑群、向って右端。身部は、上方に蓮座上に阿弥陀種子「キリーク」、下方は紀年銘と観無量寿経に出る光明遍照 偈(げ)を刻む。 |
両側面にも光明真言の後半部、不動明王種子、毘沙門天種子や法華経化城喩品に出る偈が刻まれている。
板碑 上部
頭部山形、下に二段の切込、身部は一重線の輪郭を巻く。
蓮座上に刻まれた阿弥陀種子「キリーク」 | 身部 下方の刻銘 |
下方の刻銘は、中央に「文永十二年(1275)乙亥正月十五日」、左右に「光明遍照 十方世界」「念仏衆生 摂取不捨」の光明遍照 偈を刻む。
光明遍照 → | 十方世界 → | 念仏衆生 → | 摂取不捨 |
観無量寿経に出る偈(げ)
偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念佛衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)」
[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]
向かって左側面、上部 | 向かって右側面、上部 |
両側面、上部の刻銘
右側面上部の刻銘:光明真言の後半「マ・ニ・ハン・ドマ・ジンバ・ラ」、下に不動明王の種子「カーンマーン」
左側面上部の刻銘:光明真言の後半「ハラ・バ・リタ・ヤ・ウーン」、下に毘沙門天の種子「ベイシラマンダヤ」
(この板碑は、光明真言が板碑に刻まれる古い例としても知られる。)
光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ」「シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ」 「マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ」 「ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」
向かって左側面、下部 | 向かって右側面、下部 |
両側面、下部の刻銘
右側面下部は、法華経化城喩品に出る偈(げ)の前半「願以此功徳普及及於一切」を刻む。
左側面下部は、法華経化城喩品に出る偈(げ)の後半「我等与衆生皆共成仏道」を刻む。
偈(げ):「願以此功徳(がんにしくどく) 普及於一切(ふぎゅうおいっさい) 我等与衆生(がとうよしゅじょう) 皆共成仏道(かいぐじょうぶつどう」
[ 願わくばこの功徳をもって、あまねく一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜん ]
この偈は、近隣の大福寺 交名(きょうみょう)板碑(文永四年 1267年)にも刻まれており、筆跡が一致しているという。
刻銘:「文永十二年(1275)」 | 両側面にも銘文を刻む珍しい板碑 |
大 英 寺 板 碑
本堂に向かって右前方、鐘楼の横に立つ、五基の大形板碑。
*東武伊勢崎線 加須(かぞ)駅前から朝日バス 鴻巣駅・免許センター行きバスに乗車、「根古屋バス停」下車 、南方向へ 約600m。
(撮影:平成22年4月9日、平成25年3月7日)