最勝院(さいしょういん)阿閦種子断碑

 最勝院(さいしょういん)(埼玉県川口市飯塚1-5-24)

   阿閦(あしゅく)如来の種子「ウーン」を主尊とする珍しい板碑で、惜しくも上半を欠失する。鎌倉時代後期 正応二年(1289)の紀年銘がある。

最勝院(さいしょういん)阿閦(あしゅく)種子板碑 (鎌倉時代後期 正応二年 1289年、緑泥片岩、高さ 171Cm 下幅 56Cm)

門内左手に立つ。板碑上半を欠失し、上方蓮座上に阿閦種子が残る。下方は造立趣旨・紀年銘・供養者名、左右に各一行 偈(げ)を刻む。

板碑 上部

板碑の上半を欠失、上方 蓮座上に阿閦如来の種子「ウーン」の下半が残る。身部は一重線の輪郭を巻く。

阿閦(あしゅく)は、菩提心が堅固であることを意味する。また、世の中で平和に暮らしている人々に襲ってくる悪魔

怒り、そういった大きな怒りを司る仏という。金剛界四仏の東方仏としてお馴染みだが、一尊で刻まれるのは珍しい。

阿閦種子を一尊で刻んだ板碑には、霊山院阿閦種子板碑(ときがわ町)大福寺阿閦種子板碑(加須市)等がある。

身部、下方の刻銘 刻銘:「正應二年(1289)、己丑、十一月 日

刻銘は、中央に「奉造立逆修善根 正應二年(1289)、己丑十一月 日  沙弥道教、敬白、左右に「法華経 方便品」に出る偈(げ)を刻む。

十方仏土中  → 唯有一乗法 → 无二亦无三 → 除仏方便説

法華経 方便品に出る偈(げ)

偈(げ):「十方仏土中(じっぽうぶつどちゅう)唯有一乗法(ゆいういちじょうほう)無二亦無三(むにやくむさん) 除仏方便説(じょぶつほうべんせつ)

[ 十方の仏土の中には、ただ一乗の法のみあり、二もなく三もなし。仏の方便の説を除く ]

板碑 下方

中央下方に「沙弥道教、敬白、左右に「法華経 方便品」に出る偈(げ)の一部。

刻銘:奉造立逆修善根 板碑、側・背面

最勝院 本堂

摂津 昆陽寺から、行基菩薩が刻んだと伝える十一面観音を移安し、本尊とする。

 吉祥院(きちじょういん)阿弥陀種子板碑                       石仏と石塔-目次!

最勝院(さいしょういん)(真言宗智山派)

室町時代 永正十三年(1516) 宥光法師の創建と伝える。

 板碑(いたび)

*JR京浜東北線「川口駅」下車、南方向へ 約600m。

(撮影:平成25年3月9日)