金子家(かねこけ)不動曼荼羅板碑(Ⅰ)(埼玉県朝霞市根岸台8丁目)
美しく彫られた蓮座上に三弁宝珠で荘厳された阿弥陀の種子、下の不動曼荼羅、意匠化された五輪塔、どれもが珍しく、しかも完存する。
金子家不動曼荼羅板碑(中央)(県指定文化財、鎌倉時代後期 正安三年 1301年、緑泥片岩、高さ 156Cm 下幅 37Cm)
身部は三弁宝珠の下、荘厳体で大きく阿弥陀如来の種子、下方に不動曼荼羅、その下中央に紀年銘、左右に意匠化した五輪塔を刻む。 |
板碑 頭部
頭部山形、下に二条線、身部は二重線の輪郭を巻く。
荘厳体、阿弥陀如来の種子「キリーク」。 | 身部下方、不動曼荼羅と二基の五輪塔、中央に紀年銘。 |
阿弥陀如来の種子「キリーク」は、三弁宝珠で荘厳され、見事に彫られた蓮華座上に刻まれている。
身部下方の紀年銘:「正安三年(1301)、辛丑、月日」
不動曼荼羅(ふどうまんだら)
曼荼羅の内院に不動明王を中心とする「五大明王」、外院に「十二天」の種子を各月輪内に配する。
五大明王は鎮護国家や玉体安穏を願う秘法の本尊として、十二天曼荼羅は災害削除・国土安泰などを祈って修される十二天供の本尊とされている。
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日 天 | 帝 釈 天 | 梵 天 | ||||||||
- | ア | - | イー | - | ボラ | - | ||||
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伊 舎 那 天 | 金 剛 夜 叉 | 降 三 世 明 王 | 火 天 | |||||||
イ | ウーン | ウーン | ア | |||||||
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- | 多 聞 天 | - | 不 動 明 王 | - | 焔 魔 天 | - | ||||
バイ | カーンマーン | エン | ||||||||
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風 天 | 大 威 徳 明 王 | 軍 茶 利 明 王 | 羅 刹 天 | |||||||
バー | キリーク | ウーン | ネェ | |||||||
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月 天 | 水 天 | 地 天 | ||||||||
シャ | バ | ハ | ||||||||
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不動曼荼羅の種子配置(方向は、上方が東で向かって左が北。)
通常、地天は「ヒリ」、羅刹天は「ニリ」の梵字で表す。
刻銘:「正安三年(1301)、辛丑、月日」 | 大変珍しい板碑で、しかも完存する。もう一基と一対をなしている。 |
板碑、最下部
中央に「正安三年(1301)、辛丑、月日」の紀年銘、左右に五輪塔四門の梵字(東門、発心門)
「キャ・カ・ラ・バ・ア」を意匠化して五輪塔が二基刻まれている。
板碑収蔵庫、四基の板碑
向って左から阿弥陀三尊種子板碑(Ⅱ)、不動曼荼羅板碑(Ⅰ)、不動曼荼羅板碑(Ⅱ)、阿弥陀三尊種子板碑(Ⅰ)
不動曼荼羅板碑は、二基とも正安三年(1301)銘で双式、阿弥陀三尊種子板碑も二基とも元弘三年(1333)銘で双式。
*東武東上線「朝霞駅」下車、北東方向へ徒歩 約18分。金子様、写真を撮らせて頂いて有難うございました。
(撮影:平成25年3月5日)