春日山(かすがやま)石窟仏(穴仏)

 春日山(かすがやま)石窟仏(穴仏)(奈良県奈良市高畑町春日奥山)

  春日山石窟仏は石切峠の近くにあり、「穴仏」と呼ばれ東西二窟に平安時代後期の石仏が残る。東窟に顕教系、西窟に密教系の諸仏が配置され、顕教と密教の融合が見られる。

春日山(かすがやま)石窟(国史跡、平安時代後期、凝灰岩、高さ 約1m) 全景

東西二つの石窟があり、向かって右側が東窟、左側が西窟

 春日山石窟仏 東窟

  東窟は、幅 4.7m、奥行き 約3m、高さ 約2mで、中央に石柱が立ち、東面・中央柱・西面の壁面に顕教四仏を中心とする南都仏教系の仏像が刻まれている。

春日山石窟仏 東窟 西壁 (国史跡、平安時代後期、凝灰岩、像高 91Cm)

蓮華座に立つ地蔵菩薩 四体と地蔵の左側に天部像一体が刻まれている。天部は、大破している

地蔵菩薩 左側二体 地蔵菩薩 右側二体

六地蔵を刻んだものといわれ、地蔵は錫杖(しゃくじょう)を持たない古い形で、手には宝珠を持つ。地蔵石仏では最も早い作例

 

春日山石窟仏 西壁面、中央柱、東壁面 (国史跡、平安時代後期、凝灰岩)

東窟の西壁に地蔵菩薩立像四体、中央に地面から天井まで生え抜き 約2mの石柱を彫り残し、四面に顕教四仏を刻む。東壁には、三体の観音像が刻まれている

顕教四仏は石柱の各面に像高 約60Cm、東面:薬師如来、南面:釈迦如来、西面:阿弥陀如来、北面:弥勒如来を半肉彫りする

春日山石窟仏 東窟 東壁面 (国史跡、平安時代後期、凝灰岩、像高 93Cm)

頭部を欠失する観音菩薩立像三体と観音の右手に天部像一体が残っている。六観音を刻んだものといわれている

 春日山石窟仏 西窟

  西窟は、幅 4.7m、奥行き 2.3mで、入口に多聞天、その横に金剛界五仏が刻まれている。西窟に密教系、東窟に顕教系の諸仏が配置され、顕教と密教の融合が見られる。

 

春日山石窟仏 西窟 (国史跡、平安時代後期、凝灰岩、像高 多聞天 102Cm 金剛界五仏 約94Cm)

左端に多聞天、正面に阿弥陀如来、不空成就、大日如来の坐像が三体残り、その横に宝生如来、阿閦如来が刻まれていたと思われる

阿弥陀如来像 (像高 94Cm)、蓮華座上で定印を結ぶ 不空成就如来 像、右手を上げ左手を膝上に置く

阿弥陀の向かって右側上に「開眼畢、保元二年(1157)大歳 丁丑 二月廿七日仏造始四月廿一日」の墨書銘がある

また、不空成就の向かって右に「・・・・・・廿日始之作者今如房願意」の陰刻銘があり、

欠損部は弘化二年(1845)の「興福寺雑記」により「久寿二年(1155)八月」と確認されている。

 滝坂(たきざか)弥勒地蔵磨崖仏(朝日観音)                          石仏と石塔!

刻銘:(久寿二年(1155)八月)廿日始之作者今如房願意」 大日如来 像、両手は智拳印を結ぶ。像の上半を欠失する

 石  仏-紀年順-目次

*JR奈良・近鉄奈良下車、奈良交通バスの市内循環バス乗車「破石町」下車、約4.3Km。柳生街道の石切峠近くにある。

(撮影:平成19年1月20日、平成22年6月10日)