宇智川(うちがわ)磨崖碑(奈良県五條市小島町)
この磨崖碑は、古くから有名で松平定信が編集した「集古十種」にも収められている。
宇智川(うちがわ)磨崖碑 (国史跡、奈良時代後期 宝亀九年 778年、雲母片岩)
正面の岩面に、大般(だいはつ)般若経の文を八行にわたって彫り、末尾に観音菩薩立像を線刻する
碑文:「大般涅槃経」、
「諸行無常 是生滅法 生滅々已 寂滅為楽」、「如是偈句乃是過去未来現在諸仏所説開空法道」、
「如来証涅槃永断於生死若有至心聴」、「常徳無量楽」、「若有書写読誦為他能説一経其身於劫後七劫不堕悪道」、
「宝亀九年(778)二月四日 工少口口口口」、「知識口口」の八行。(「奈良県史 7 石造美術、名著出版)
現地 説明板
説明板の碑文は、右から二行目の「諸行無常」から、八行目の「不堕悪道」まで七行だが、実際は五行で刻まれている
涅槃経の偈(げ):「諸行無常(しょぎょうむじょう)、是生滅法(ぜしょうめっぽう)、生滅滅已(しょうめつめつい)、寂滅為楽(じゃくめついらく)」
(諸行は無常である。これ生滅の法である。生滅を滅しおわりて、生も滅もない寂滅を楽しみとする。)
本文、右から三行目の「現在諸仏所説開空法道」の刻銘 | 碑文:経を書写読誦する者は七劫の間、悪道に堕ちず |
紀年銘は、宝亀九年(778)二月四日と宝亀七年(776)七月四日の説がある
末尾に、観音菩薩立像が、線刻されている | 本文、右から四行目の「永断於生死若有至心聴」の刻銘 |
末尾に線刻されている観音菩薩立像は、蓮華座と頭部の辺りが残っているが、他の部分は剥落している
宇 智 川
磨崖碑のある場所より北側(上流側)の風景
*JR和歌山線「五条駅」下車、栄山寺の方向へ徒歩 約17分。見学に行かれたほとんどの方が、案内板や案内表示に従って川原に下りてみたけれど、どこに彫られているかわからず、消化不良で帰られた経験があると思う。当方も、その一人で、二回目の時にそれらしき場所をカメラで撮り、帰宅してから写真を拡大し、実際の場所を知った。
(撮影:平成22年5月14日)