天寿庵(てんじゅあん)阿弥陀三尊種子板碑

 天寿庵(てんじゅあん)(宮城県大崎市古川堤根字上屋敷)

   頭部山形、下に二条線を持つ武蔵型板碑の特長を備えた板碑で、当地では初期板碑に属する鎌倉時代中期 弘安二年(1279)の紀年銘がある。

天寿庵 阿弥陀三尊種子板碑(市指定文化財、鎌倉時代中期 弘安二年 1279年、粘板岩、高さ 223Cm 幅 47.5Cm)

参道入口、板碑群三基の奥側に立つ。身部は、上方に阿弥陀三尊種子、その下に往生要集に出る偈、下方に紀年銘と願文を刻む。

武蔵型板碑の特長を備えるが、石材は宮城県石巻市を主産地とする「井内石(稲井石)」(粘板岩)を使用する。

板碑、頭部

頭部山形、下に二段の切込、その下に額部を表現したものか界線を横に線刻する。

身部上方、阿弥陀三尊の種子を薬研彫する。 身部下方

三尊種子は、上方に阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左に勢至菩薩の種子「サク」を蓮座なしに薬研彫する。

身部下方の刻銘は二段に分け、上方に往生要集に出る「極重悪人」の偈(げ)、下方中央に紀年銘、その左右に願文を刻む。

往生要集に出る偈(げ)

偈(げ):「極重悪人(ごくじゅうあくにん)無他方便(むたほうべん)、唯称念仏(ゆいしょうねんぶつ)得生極楽(とくしょうごくらく)

[ 極重悪人には他の方便(てだて)なし、ただ念仏をとなえれば、極楽に生まれることができる。]

身部下方、願文と紀年銘 刻銘:「弘安二年(1279)、己卯、五月十四日」

願文と紀年銘:「右志者為過去聖霊出離、生死往生極楽證大菩提也」、「弘安二年(1279)、己卯、五月十四日」

石塔婆、最下部

根部はなく、中央に「弘安二年(1279)、己卯、五月十四日」の紀年銘を刻む。

宮城県には、武蔵型板碑と似た板碑は極めて少ない。 板碑背面

また、武蔵型板碑の特長を有する本板碑が、武蔵地方に多い阿弥陀三尊種子を主尊とするのも興味深い。

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天寿庵 (てんじゅあん)

 板碑(いたび)

*JR陸羽東線 古川駅前からミヤコーバス高倉線 中新田行きに乗車、「堤根バス停」下車、北方向へ 約100m。

(撮影:平成26年4月15日)