山口家(やまぐちけ)地蔵種子石塔婆

 山口家(やまぐちけ)石塔婆群 (宮城県石巻市東福田字馬場)

   三十五日忌に造立された石塔婆で、その本尊地蔵種子及び延命地蔵経に出る偈(げ)を刻んでいる。南北朝時代後期 嘉慶三年(1389)の在銘。

山口家 地蔵種子石塔婆(南北朝時代後期 嘉慶三年 1389年、粘板岩、高さ 90Cm 幅 33Cm 厚さ 7Cm)

石塔婆は、上方に地蔵種子[カ」、その下に延命地蔵経に出る偈(げ)、下方は造立趣旨と紀年銘を刻む。

下方の刻銘は、他の塔婆の陰になり見えないが、下記の通り刻まれている。

刻銘は中央に三行「右意趣者為 三月九日」、「嘉慶三年(1389)、戊巳」、「三月九日、施主、敬白」

左右に「過去一安幽霊三十五日」、「乃至法界平等利益也」と刻む。

(嘉慶三年(1389)は二月八日迄で、刻銘にある三月九日は康応に改元されている。干支も己巳が正解で、戊巳は間違っている。)

南北朝時代後期 嘉慶三年(1389)三月九日、三十五日忌のため造立された。

身部 上方

三十五日(五七日)忌の本尊 地蔵菩薩の種子「カ」を薬研彫する。

延命地蔵経に出る偈(げ)

偈(げ):「毎日晨朝入諸定(まいにちじんじょうにゅうしょじょう)、入諸地獄令離苦(にゅうしょじごくりょうりく)、           

                無仏世界度衆生(むぶつせかいどしゅじょう)、今世後世能引導(こんぜごせのういんどう)

(地蔵菩薩は)毎日早朝に諸々の定(じょう)に入り、諸々の地獄に入って衆生の苦を離れさしめ、              

                            仏なき世界(釈迦涅槃から弥勒下生まで)に衆生を済度し、現世も来世もよく引導したもう。 ]

山口家(やまぐちけ)永徳三年銘石塔婆

 山口家(やまぐちけ)石塔婆群 (宮城県石巻市東福田字馬場)

   法華経を一百三十六部読誦し、本石塔婆を逆修碑として造立した。南北朝時代後期 永徳三年(1383)の紀年銘がある。

山口家(やまぐちけ)石塔婆(断碑)(南北朝時代後期 永徳三年 1383年、粘板岩、高さ 135Cm 幅 42Cm 厚さ 6Cm)

石塔婆は、上部を欠失する。身部の下部が残り、法華経 方便品に出る偈(げ)及び造立趣旨・紀年銘を刻む。

法華経 方便品に出る偈(げ)

偈の部分は、かなり破損している。

偈(げ):「十方仏土中(じっぽうぶつどちゅう)、唯有一乗法(ゆいういちじょうほう)、無二亦無三(むにやくむさん)、除仏方便説(じょぶつほうべんせつ)

[ 十方の仏土の中には、ただ一乗の法のみあり、二もなく三もなし、仏の方便の説を除く ]

身部 下方、刻銘 刻銘:「永徳三年(1383)、癸亥、仲冬(十一月)

刻銘は向かって右から右志趣口禅證相口七分全得読誦、法花妙典一百三十六部造立塔婆浄身、

、即仏果者也若尓者速究夢想安意之心底忽到口仙仏、永徳三年(1383)、癸亥、仲冬(十一月)上旬 沙門禅證 敬白」と刻む。

南北朝時代後期 永徳三年(1383)仲冬(十一月)上旬、沙門禅証が法華経を一百三十六部奉読し、自らの逆修供養のため本碑を造立した。

七分全得という言葉は、、生前に自分の死後の為の供養(逆修)を積んでおくと、死後におけるすべての功徳は自分が得られる。死後の

追善供養は、死者が益を受けること極めて少なく、福を七分して、死者が一分を得られ、六分は供養した人が受ける。逆修の功徳は全得と説く。

山口家(やまぐちけ)金剛界大日種子石塔婆

 山口家(やまぐちけ)石塔婆群 (宮城県石巻市東福田字馬場)

   金剛界大日種子を主尊とする十三年忌の石塔婆で、南北朝時代後期 康応二年(1390)の紀年銘がある。

山口家 金剛界大日種子石塔婆(南北朝時代後期 康応二年 1390年、粘板岩、高さ 88Cm 幅 27Cm 厚さ 5Cm)

頂部右側を破損する。身部は、上方に金剛界大日種子、その下に法華経 如来神力品に出る偈(げ)、下方は造立趣旨と紀年銘を刻む。

下方の刻銘は、地中に埋没して見えないが、下記の通り刻まれている。

刻銘は中央に「右志趣者為 康応二年(1390)、庚午、三月日

左右に「過去幽霊十三年出離生死往生、乃至法界平等利益故也」と刻む。

南北朝時代後期 康応二年(1390)三月、十三回忌の追善供養の為、造立された。

身部 上方

十三回忌の本尊 大日如来の種子「バン」を薬研彫する。

「法華経 如来神力品」に出る偈(げ)

偈(げ):「於我滅度後(おがめつどご)、応受持斯経(おうじゅじしきょう)、是人於仏道(ぜにんおぶつどう)、決定無有疑(けつじょうむうぎ)

[ 我が(釈迦)滅度(命終)の後に於いて、まさにこの経を受持すべし、この人仏道において、決定して疑いあることなし ]

※ 山口家(やまぐちけ)石塔婆群 一覧

 山口家(やまぐちけ)勢至種子石塔婆                     石仏と石塔-目次!

山口家(やまぐちけ)石塔婆群(部分)

向かって右端に、嘉慶三年(1389)銘地蔵種子石塔婆がみえる。

 板碑(いたび)

*JR石巻駅からミヤコ―バス石巻専修大学線 飯野川行きに乗車、福田バス停下車、南東方向へ徒歩 約1.2Km。石巻駅前のレンタカーの店で、自転車を借りるのが便利。

(撮影:平成26年4月12日)