不動寺(ふどうじ)(群馬県安中市松井田町松井田甲987)
参道の門前、南北に三基並立する自然石塔婆、その中央の塔婆。南北朝時代前期観応三年(1352)の紀年銘がある。
東 面(正面)
不動寺 自然石塔婆中央碑(県指定文化財、南北朝時代前期 観応三年 1352年、安山岩、高さ 155Cm 幅 135Cm 厚さ 60Cm) |
東面(正面)は、上方に天蓋と蓮座で荘厳した胎蔵界大日三尊種子、その向って右側に種字「イー」・左に種字「ア」を月輪内に薬研彫りし、
下方中央に紀年銘、その両側に三茎蓮を活けた一対の花瓶、右花瓶の向って右上に踏割式蓮座に立つ仏像を線刻する。線刻の部分は見えにくい。
天蓋の下、胎蔵界大日三尊種字 | 刻銘:「観応三年(1352)、壬辰、八月時正、逆修、敬白」 |
胎蔵界大日三尊種子は、上方に五点具足の胎蔵界大日如来の種子「アーンク」、向って右下 に文殊菩薩の種子「マン」、左に普賢菩薩の種子「アン」を刻む。
紀年銘に「逆修」の文字があり、願主が生存中に自分の為に死後の法要を営む「逆修供養」のため造立したことがわかる。
胎蔵界大日如来 脇侍種字「マン」・「アン」と線刻部
大日脇侍種字、向って右に文殊菩薩の種子「マン」、左に普賢菩薩の種子「アン」。両種字は、通常 釈迦三尊の脇侍として使われる。
下方の線刻部は、中央に「観応三年(1352)壬辰、時正、逆修、敬白」、左右に三茎蓮を活けた一対の花瓶、その右上に踏割式蓮座に立つ仏像。
踏割(ふみわり)式蓮座に立つ仏像
摩耗が激しく、はっきりと見えにくい。
石塔婆、向って左側、月輪内に種子「ア」 | 石塔婆、向って右側、月輪内に種子「イー」 |
正面(東面)の胎蔵界大日三尊種子、その向って右側に種字「イー」・左に種字「ア」が月輪内に薬研彫りされている。
西 面(背面)
不動寺 自然石塔婆中央碑 背面 (県指定文化財、南北朝時代前期 観応三年 1352年、安山岩、高さ 155Cm 幅 135Cm) |
西面(背面)は、中央に天蓋と蓮座で荘厳した金剛界大日五仏種子、その向って右側に阿弥陀種字「キリーク」・左に薬師種字「バイ」を月輪内に薬研彫りし、
下方向って右に不動明王の種字「カーン マーン」・左に毘沙門天の種字「ベイシラマンダヤ」、その両側に三茎蓮を活けた一対の花瓶を刻む。
金剛界大日五仏種子は、上から金剛界大日種字「バン」・阿閦種字「ウーン」・宝生種字「タラーク」・阿弥陀種字「キリーク」・不空成就「アク」。
石塔婆 背面、上部
天蓋の下 金剛界大日五仏種子、その向って右側に阿弥陀如来の種字「キリーク」・左に薬師如来の種字「バイ」を月輪内に薬研彫りする。
背面左下、毘沙門天の種字「ベイシラマンダヤ」 | 背面右下、不動明王の種字「カーン マーン」 |
石塔婆 背面下方、種字と三茎蓮花の花瓶
三茎蓮を活けた一対の花瓶は、表面よりよく残っている。
中央碑、北西面 | 中央碑、南面 |
不動寺(ふどうじ)自然石塔婆 三基 背面 (県指定文化財、南北朝時代前期 観応三年 1352年)
向って左から北碑、中央碑(本碑:観応三年銘)、南碑(観応三年銘)。
不動寺本堂 (真言宗 豊山派)
不動寺は、鎌倉時代中期 寛元元年(1243)慈猛上人により開山された古刹。
*JR信越本線「松井田駅」下車、北北東方向に 約1.5Km。
(撮影:平成28年10月15日)