(延文六年銘)
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左面側に展示)
下忍村堤根(現、埼玉県行田市)に旧在した板碑で、釈迦種子「バク」を主尊とする。下方に「大日如来真言」が刻まれている。
徳蔵寺(とくぞうじ)釈迦一尊種子板碑 (南北朝時代中期 延文六年 1361年、緑泥片岩、高さ 66.5Cm 下幅 21Cm) |
頭部山形、下に二条線、身部は一重線の輪郭を巻き、上方 蓮座上に釈迦如来の種子「バク」、下方は向って右に大日如来真言、中央と左に紀年銘を刻む。
主尊、釈迦如来の種子「バク」 | 身部 下方の刻銘 |
刻銘は、向って右に大日如来真言「ア・バ・ラ・カ・キャ」、中央と左に「延文六年(1361)丑、二月十五日」と刻む。(干支、辛丑の辛が省略されている。)
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって右側列に展示)
釈迦種子「バク」を主尊とする板碑で、室町時代初期 明徳五年(1394)の紀年銘がある。
徳蔵寺(とくぞうじ)釈迦一尊種子板碑(室町時代初期 明徳五年 1394年、緑泥片岩、高さ 81Cm 下幅 29Cm |
頭部山形、下に二条線、身部は一重線の輪郭を巻き、上方 蓮座上に釈迦如来の種子「バク」、下方は中央に紀年銘、左右に各二行梵字光明真言を刻む。
身部、下方の刻銘
刻銘は、中央に「明徳五年(1394)、甲戌、口月、廿四日」、左右に各二行「梵字光明真言」を刻む。
光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ」「シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ」 「マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ」「ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左側列に展示)
中山村(現、埼玉県川島町)に旧在した板碑で、阿弥陀三尊種子を主尊とする。南北朝時代中期 延文五年(1360)の紀年銘がある。
徳蔵寺(とくぞうじ)阿弥陀三尊種子板碑(南北朝時代中期 延文五年 1360年、緑泥片岩、高さ 64Cm 下幅 30Cm |
板碑の上部を欠損。身部は一重線の輪郭を巻き、蓮座上月輪内に阿弥陀三尊の種子、下方中央に紀年銘と供養者名、その左右に各二行 「無量寿経」に出る偈を刻む。
身部、阿弥陀三尊の種子を蓮座上月輪内に薬研彫する | 刻銘:「延文五年庚子、仲秋時正、了仙禅尼、逆修」 |
阿弥陀三尊種子は、上方に阿弥陀種子「キリーク」の下半が残り、向って右下 に観音種子「サ」、左下に勢至種子「サク」を蓮座上月輪内に薬研彫する。
南北朝時代中期 延文五年(1360)秋 彼岸の中日(時正)に了仙禅尼が生前に逆修供養として造立した。
時正(じしょう)とは、太陽が真東から真西に沈む彼岸の中日のことで、彼岸日に法事を選んで行うのは、真西に極楽浄土があると信じられていたから。
身部下方、無量寿経に出る偈(げ)
偈(げ):「其仏本願力(ごぶつほんがんりき)、聞名欲往生(もんみょうよくおうじょう)、皆悉到彼国(かいしつとうひこく)、自致不退転(じちふたいてん)」
[ その仏(阿弥陀如来)の本願力により、名を聞いて往生せんと欲すれば、皆ことごとく彼の国(極楽)に到りて、おのずから不退転に致らん。 ]
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左側列に展示)
八ツ保村(現、埼玉県川島町)に旧在した板碑で、阿弥陀三尊種子を主尊とする。室町時代中期 永正二年(1505)の紀年銘がある。
徳蔵寺(とくぞうじ)阿弥陀三尊種子板碑 (室町時代中期 永正二年 1505年、緑泥片岩、高さ 81Cm 下幅 23Cm |
頭部山形、二条線は不明。身部は輪郭がなく、上方に阿弥陀三尊の種子、下方中央に紀年銘、左右に供養者名を刻む。
碑面の刻銘 | 刻銘:「永正二年(1505)六月十一日」 |
上方に阿弥陀三尊の種子、下方中央に「永正二年(1505)六月十一日」、左右に「道通」、「禅門」と刻む。
阿弥陀三尊種子は、上方蓮座上月輪内に阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左下に勢至菩薩の種子「サク」を刻む。
中尊 阿弥陀種子の月輪、その外周を梵字光明真言で荘厳している。当サイトの掲載板碑では、十六世紀に入ると光明真言は、月輪状・天蓋状のものしか見られない。
阿弥陀三尊種子と月輪
光明真言は、頂上の「オン」から右回りに前半部、左回りに後半部が刻まれ、前・後半部とも最後の二・三文字は、はみ出して縦に刻んでいる。
光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ」 「マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」
*西武新宿線「東村山駅」下車、北方向へ徒歩 約16分。徳蔵寺板碑保存館の板碑群は、整理が行き届いており、ここを拝観するだけで武蔵型板碑の概観を知ることができる。ぜひ、一見をお勧めしたい。(月曜日休館、拝観料 200円)。
(撮影:平成25年3月6日)