徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左面側に展示)
桶川町(現、埼玉県桶川市)に旧在した板碑で、主尊は変形の釈迦種子、脇侍は阿弥陀三尊の脇侍 観音・勢至種子を刻んだ板碑。
徳蔵寺(とくぞうじ)釈迦三尊種子板碑 (鎌倉時代後期 嘉暦三年 1328年、緑泥片岩、高さ 60Cm 下幅 19.5Cm) |
頭部山形、下に二条線、身部の輪郭はなく、上方 蓮華座上に釈迦如来の種子、その下左右に観音・勢至の種子、下方三行に紀年銘を刻む。
釈迦三尊、阿弥陀の脇侍(観音「サ」・勢至「サク」)と同じ。 | 主尊、釈迦如来の種子「バク」 |
主尊は大きく釈迦如来の種子「バク」、脇侍は向って右下に観音の種子「サ」、左下に勢至の種子「サク」を刻んだ板碑で、脇侍は阿弥陀三尊の脇侍と同じ。
三尊の組み合わせは、全国でも例がない唯一のものと思われる。
身部、下方の刻銘
刻銘は、下方に三行「嘉暦三年(1328)、戊辰、十月、十五日」と刻む。銘は異体文字で刻んでいる。
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左側列に展示)
釈迦種子を主尊とする板碑で、南北朝時代中期 延文五年(1360)の紀年銘がある。
徳蔵寺 釈迦一尊種子板碑(南北朝時代中期 延文五年 1360年、緑泥片岩、高さ 46.5Cm 下幅 15.5Cm |
頭部山形、下に二条線、身部の輪郭はなく、中央に釈迦如来の種子「バク」、下方に「延文五年(1360)、九月廿三日」の紀年銘を刻む。
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって右側列に展示)
大石村(現、埼玉県桶川市)に旧在した板碑で、釈迦種子を主尊とする。室町時代前期 応永十二年(1405)の紀年銘がある。
徳蔵寺 釈迦一尊種子板碑(室町時代前期 応永十二年 1405年、緑泥片岩、高さ 49.5Cm 下幅 16.5Cm |
頭部山形、下に二条線、身部の輪郭はなく、中央 蓮華座上に釈迦の種子「バク」、下方に「応永十二年(1405)、三月十五日」の紀年銘を刻む。
私年号とは、公的な年号と異なり民間で独自に用いられた年号で、「福徳」の年号はその中でも一番多く使用されている。但し、関東地方に限る。
徳蔵寺 福徳二年銘 私年号断碑 (室町時代中期 福徳二年 1490~92年、緑泥片岩、高さ 19Cm 下幅 22Cm |
板碑は上半を欠失する。下方中央に「妙幸禅尼」、左右に「福徳二年」、「十一月廿三日」と刻む。
「板碑の総合研究 総論編」(柏書房)によれば、福徳年 板碑数は総計三十六基で、埼玉・東京・神奈川・千葉・茨城に確認されており、埼玉・東京が際立って
多い。また、年別では元年、二年、三年という事例があり、福徳二年が二十数基と半数以上にのぼる。また干支の刻まれたものは、年別にかかわらず、その
いずれにも「辛亥」がついている。結果、福徳二年は公年号の「延徳二年(1490)~明応元年(1492)までの間」とおおまかにみる他にない実情という。・・・・・・・
身部、下方の刻銘
刻銘:「妙幸禅尼」、「福徳二年」、「十一月廿三日」
*西武新宿線「東村山駅」下車、北方向へ徒歩 約16分。徳蔵寺板碑保存館の板碑群は、整理が行き届いており、ここを拝観するだけで武蔵型板碑の概観を知ることができる。ぜひ、一見をお勧めしたい。(月曜日休館、拝観料 200円)。このページは、釈迦種子を主尊とする板碑と私年号を紹介しています。
(撮影:平成25年3月6日)