徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって右側列に展示)
比企郡出丸村(現、埼玉県川島町)に旧在した板碑で、上半を欠失するが、下方に「無量寿経」 弥陀四十八願中 第十八願を全文刻んだ珍しい板碑。
徳蔵寺(とくぞうじ)嘉暦二年銘断碑 (鎌倉時代後期 嘉暦二年 1327年、緑泥片岩、高さ 102Cm 下幅 38Cm) |
板碑 上半を欠失する。身部は二重線の輪郭を巻き、下方中央に紀年銘、左右に無量寿経 弥陀四十八願中の第十八願を全文刻む。
左右に各二行、無量寿経に出る偈(弥陀 第十八願)を刻む。 | 刻銘:「嘉暦二年(1327)、丁卯、十二月七日」 |
弥陀四十八願中、この第十八願を念仏往生の願とし、本願中の王とも称され、中国・日本の代々浄土教家たちによって重視されている。
身部、下方の刻銘
刻銘は、中央に「嘉暦二年(1327)、丁卯、十二月七日」、左右に無量寿経に出る偈(げ)、
「設我得佛十方衆生至、心信楽欲生我国乃至」、「十念若不生者不取正、覚唯除五逆誹謗正法」を刻む。
偈(げ):「設我得佛(せつがとくぶつ)、十方衆生(じっぽうしゅじょう)、至心信楽(ししんしんぎょう)、欲生我国(よくしょうがこく)、乃至十念
(ないしじゅうねん)、若不生者(にゃくふしょうじゃ)、不取正覚(ふしゅしょうがく)、唯除五逆(ゆいじょごぎゃく)、誹謗正法(ひぼうしょうほう)」
[ たとえわれ仏となるをえんとき、十方の衆生、至心に信楽して、わが国に生まれんと欲し、乃至十念せん。もしわが国に生まれることができなかったら、
我は仏にならない。ただ、五逆の罪を犯すものと正法を誹謗(ひぼう)するものを除く。](通常、後の二句は、ほとんど刻まれることはない。)・・・・・・・・・・
五逆:1.母を殺すこと。2.父を殺すこと。3.阿羅漢を殺すこと。4.仏身を傷つけ血を出さすこと。5.僧伽(仏教教団)を破壊すること。 (小乗の五逆)
五逆:1.塔寺を破壊し経像を焼き三宝(さんぽう)の財産を盗むこと。2.声聞・縁覚・大乗の教えをそしること。3.出家者の修行を妨げあるいは殺すこと。
4.小乗の五逆のうちの一罪を犯すこと。5.因果の道理を信ぜず、悪口・邪淫などの十不善業(じゅうふぜんごう)をなすこと。(大乗の五逆)
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左側列に展示)
比企郡八ツ保村(現、埼玉県川島町)に旧存した板碑で、観無量寿経に出る偈(げ)を刻む。南北朝時代 応安七年(1374)の在銘碑。
徳蔵寺 応安七年銘 断碑(南北朝時代中期 応安七年 1374年、緑泥片岩、高さ 89Cm 下幅 32.5Cm |
板碑は、上半を欠失する。身部は一重線の輪郭を巻き、下方中央に紀年銘、その左右に「慶信、禅門」、外側左右に「観無量寿経」出る偈(げ)を各一行刻む。
刻銘、全文 | 刻銘:「應安七年(1374)、甲刁、(寅)」 |
刻銘は、中央に「応安七年(1374)、甲刁(寅)、九十七日、慶信、禅門」、外側左右に「観無量寿経」に出る偈(げ)を刻む。
光明遍照 → | 十方世界 → | 念仏衆生 → | 摂取不捨 |
観無量寿経に出る偈(げ)
偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念仏衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)」
[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]
身部、下方の刻銘
刻銘は、中央に「九十七日」、左右に「慶信、禅門」と刻む。九十七日は、九月十七日と思われる。
徳蔵寺(とくぞうじ)(東京都東村山市諏訪町1-26-3)(「元弘の碑」に向かって左側列に展示)
比企郡中山村(現、埼玉県川島村)に旧在した板碑で、上半を欠失する。身部に金剛般若経に出る偈(げ)を刻む南北朝時代 康安二年(1262)の在銘碑。
徳蔵寺 康安二年銘断碑(南北朝時代中期 康安二年 1362年、緑泥片岩、高さ 51Cm 下幅 31Cm) |
板碑は、上半を欠失する。身部は一重線の輪郭を巻き、中央に「康安二年(1362)、壬刁(寅)、十月十五日、超禅々門、孝子敬白」、
上方左右に「金剛般若経」出る偈(げ)「一切有為法、如夢幻泡影」、「如露亦如電、應作如是観」を各二行刻む。
尚、康安二年(1362)は、9月22日迄で、23日から貞治元年に改元されている。
金剛般若経に出る偈(げ)
偈(げ):「一切有為法(いっさいういほう)、如夢幻泡影(にょむげんほうよう)、如露亦如電(にょろやくにょでん) 、應作如是観(おうさにょぜかん)」
[ 一切の有為法(形成されたもの)は、夢・幻・泡・影の如く、露の如く、また電光の如し、応(まさ)に是(かく)の如き観を作(な)すべし。 ]
*西武新宿線「東村山駅」下車、北方向へ徒歩 約16分。徳蔵寺板碑保存館の板碑群は、整理が行き届いており、ここを拝観するだけで武蔵型板碑の概観を知ることができる。ぜひ、一見をお勧めしたい。(月曜日休館、拝観料 200円)。このページは、偈頌(げじゅ)を伴う板碑を紹介しています。板碑を見る楽しさの一つは、美しい文字で偈(げ)が刻まれていることだと思います。その意味でも、徳蔵寺板碑保存館は十分満足できると思います。
(撮影:平成25年3月6日)