清谷寺(せいこくじ)(東京都中野区沼袋3-21-7)
完存する十三仏板碑の代表的作品。室町時代前期 応永六年(1399)の紀年銘がある。
清谷寺 十三仏種子板碑(区指定文化財、室町時代前期 応永六年 1399年、緑泥片岩、高さ 94Cm 下幅 33Cm) |
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本堂前右手、覆屋内に安置されている。身部は最上段に金剛界大日の種子を大きく、その下二列六段に、残り十二仏を月輪内に刻む。 |
十三仏は、死者の追善供養のために①.初七日(不動)、②.二七日(釈迦)、③.三七日(文殊)、④.四七日(普賢)、⑤.五七日(地蔵)、⑥..六七日(弥勒)、⑦.七七日(薬師)、
⑧.百ヶ日(観音)、⑨.一周忌(勢至)、⑩.三回忌(阿弥陀)、⑪.七回忌(阿閦)、⑫.十三回忌(大日)、⑬.三十三回忌(虚空蔵)の十三仏事にわりあてられた仏・菩薩をいう。・・
最初の十仏は、閻魔王など十王の本地仏を、初七日(不動)から三回忌(阿弥陀)までに当て、この十仏に七回忌 阿閦、十三回忌 大日、三十三回忌 虚空蔵を加えたのが十三仏。
本板碑では、最後の三仏が、⑪胎蔵界大日(アーク)、⑫胎蔵界大日(アーンク)、⑬金剛界大日(バーンク)となっている。(○内番号は、十三仏の順序)
板碑 頭部
頭部山形、下に二条線、額部は薄く突出し、身部は一重線の輪郭を巻く。
十三仏、最下段向って右の「カーン(不動)」が基点。 | 刻銘:「應永六年(1399)、己卯、十月十五日」 |
十三仏の順序は、最下段右側(不動明王:初七日)を基点として右から左へ、右上に上がり左へと千鳥式に十仏(阿弥陀:三回忌)まで上がる。最後の三仏は、通常
⑪.阿閦(ウーン)、⑫.大日(バン)、⑬.虚空蔵(タラーク)であるが、本板碑は ⑪.胎蔵界大日(アーク)、⑫.胎蔵界大日(アーンク)、⑬.金剛界大日(バーンク)となっている。・
石村喜英氏は、板碑の総合研究(1)総論編(柏書房)、「題目、名号、十三仏板碑」項で、「密教教理の立場では、大日如来は万徳を保持する仏尊で
あり、その一部の得をつかさどるのが諸仏諸尊であるとする教義上の論理からは、大日如来の種子は諸仏諸尊に通ずることになろう」と述べている。
十三仏の最上段
⑬.金剛界大日如来(五点具足)(三十三回忌)の種子「バーンク」
⑫.胎蔵界大日如来(五点具足)(十三回忌) | ⑪.胎蔵界大日如来(七回忌) |
(アーンク) | (アーク) |
十三仏 二段目
⑩.阿弥陀如来(三回忌) | ⑨.勢至菩薩(一周忌) |
(キリーク) | (サク) |
十三仏 三段目
⑧.観音菩薩(百ヶ日) | ⑦.薬師如来(七七日) |
(サ) | (バイ) |
十三仏 四段目
中央に「応永六年(1399)」の紀年銘がみえる。
⑥.弥勒菩薩(六七日) | ⑤.地蔵菩薩(五七日) |
(ア) | (カ) |
十三仏 五段目
弥勒は通常「ユ」で表すが、ここでは「ア」で表現している。
④.普賢菩薩(四七日) | ③.文殊菩薩(三七日) |
(アン) | (マン) |
十三仏 六段目
②.釈迦如来(二七日) | ①.不動明王(初七日) |
(バク) | (カーン) |
十三仏 最下段
最下段の種子の下には、各々蓮華座が刻まれている。
刻銘:「應永六年(1399)、己卯」 | 刻銘:「逆修心信、結衆敬白」 |
身部中央に、「応永六年(1399)、己卯、十月十五日」の紀年銘、下方中央に「逆修心信、結衆敬白」と刻んでいる。
清谷寺 十三仏種子板碑(中央)(区指定文化財、室町時代前期 応永六年 1399年)
清谷寺(せいこくじ)本堂 (真言宗豊山派)
本堂に向って、右端に板碑と覆屋がみえる。
*西武新宿線 「沼袋駅」下車、西南西方向へ徒歩 約9分。
(撮影:平成25年3月6日)