薬王寺(やくおうじ)(埼玉県比企郡吉見町中新井)
板碑は上半を欠失し、下方の銘文のみ残る。蓮華三昧教に出る偈と鎌倉時代中期 弘安四年(1281)の紀年銘が刻まれている。
薬王寺 断碑 (鎌倉時代中期 弘安四年 1281年、緑泥片岩、高さ 103Cm 下幅 64Cm 厚さ 8Cm)
板碑は、上半を欠く。下半は、一重線の輪郭を巻き、中央に願文・紀年銘、左右に蓮華三昧教に出る偈(げ)を刻んでいる。 |
板碑の刻銘
中央の刻銘:「現当二世悉地圓満也 弘安二二(四)年(1281)口巳、・・・」
左右の刻銘(偈):「帰命本覚心法身、常住妙法心蓮臺」、「本来具足三身徳、三十七尊住心城」、
帰命本覚心法身 → | 常住妙法心蓮臺 → | 本来具足三身徳 → | 三十七尊住心城 |
蓮華三昧経に出る偈(げ)
偈(げ):「帰命本覚心法身(きみょうほんがくしんほうしん) 常住妙法心蓮台(じょうじゅうみょうほうしんれんだい)、
本来具足三身徳(ほんらいぐそくさんしんとく) 三十七尊住心城(さんじゅうしちそんじゅうしんじょう)」
[ 本覚心の法身(大日如来)に帰命し奉る。常に妙法の心蓮台に住し、もとよりこのかた法身・報身・応身の三身徳をそなえ、三十七尊の心城に住す ]
※ 心蓮台は、自性心の清浄なるを心蓮とする、心蓮の台である。三十七尊は、金剛界曼荼羅の主要な尊体。心城は、
その諸尊の心を城にたとえたもの、心の動揺を防ぐ意がある。(「日本石造美術辞典」、川勝政太郎 著、東京堂出版)
刻銘:「弘安二二(四)年(1281)口巳、・・・」 |
板碑(断碑)、側・背面 |
阿弥陀種子 断碑
弘安四年銘断碑の下に置かれ、上半の阿弥陀種子までが残る。額部が薄く出ている。
お堂の前、二基の板碑が安置されている。
*東武東上線 東松山駅東口から川越駅行きバス、またはJR高崎線 鴻巣駅前から東松山駅行きバスに乗車、「比企吉見農協前バス停」下車、北方向へ 約1.9Km。蓮華寺から東に 約250m。
(撮影:平成24年11月11日)