長福寺 貞治二年銘 阿弥陀三尊種子板碑

 長福寺(ちょうふくじ)(埼玉県さいたま市北区別所町98-6)

   主尊を荘厳する天蓋(てんがい)の形が豪華な板碑で、南北朝時代中期 貞治二年(1363)の紀年銘がある。

長福寺 阿弥陀三尊種子板碑(中央)(市指定文化財、南北朝時代中期 貞治二年 1363年、緑泥片岩、高さ 120Cm 下幅 32Cm)

板碑群後列、向って右から二基目。身部は、上方天蓋の下 阿弥陀三尊種子を蓮座上に、下方に供養者名・紀年銘と光明真言を刻む。

板碑 頭部

頭部 山形、下に二条線、身部は一重の輪郭を巻く。輪郭内最上部に天蓋を刻む。

天蓋(てんがい)

逆蓮様の天蓋、瓔珞(ようらく)は糸の部分が珠文(小円)を連ねて豪華、先端の飾りも彫りが深い。

天蓋の下、蓮座上に「阿弥陀三尊」の種子を刻む。 刻銘:「貞治二(1363)、癸卯、二月 日

阿弥陀三尊は、上方に阿弥陀の種子「キリーク」、向って右下 に観音の種子「サ」、左に勢至の種子「サク」を蓮座上に刻む。

身部 下方の刻銘

刻銘は、中央に「貞治二(1363)、癸卯、二月 日、僧正弁、逆修」、左右に各二行「梵字光明真言」を刻む。

光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ」「シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ」 「マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ」「ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」

本板碑は、板碑造立の最盛期で、しかも光明真言登載板碑の最盛期に造られている。また、天蓋の形が独特で、豪華感があり美しい。

長福寺(ちょうふくじ)六字名号断碑

  板碑群中唯一、「南無阿弥陀仏」の六字名号を刻んだ板碑で、惜しくも上方だけが展示されている。

長福寺 阿弥陀三尊種子板碑(市指定文化財、緑泥片岩、高さ 55Cm 幅 30Cm 厚さ 3.3Cm)

 長福寺(ちょうふくじ)嘉暦三年銘 阿弥陀種子板碑                 石仏と石塔-目次!

長福寺(ちょうふくじ)板碑群

前・後列、合わせて十三基の板碑が覆屋内に安置され、一括で市の文化財に指定されている。

中世、大谷郷に属していたこの地域は、南北朝時代が始まった年 建武元年(1334)に、足利直義から三浦介時継に恩賞として付与されている。

 板碑(いたび)

*JR高崎線 宮原駅西口から東武バスウェスト 「別所団地・しらかば通り」行きに乗車、「しらかば通りバス停」下車、北方向へ約300m。

(撮影:平成25年3月10日)