須藤家(すどうけ)十三仏種子板碑(埼玉県東松山市1-11-59)
身部最上段に刻まれた胎蔵界大日種子、その周りを取り囲む梵字光明真言の月輪がなんとも美しい十三仏板碑。室町中期 享徳二年(1453)の在銘。
須藤家 十三仏種子板碑(市指定文化財、室町時代中期 享徳二年 1453年、緑泥片岩、高さ 132Cm 下幅 36Cm)
門内左手、小堂内に安置されている。身部は最上段に胎蔵界大日の種子を大きく、その下二列に、残り十二仏を蓮華座上月輪内に刻む。 |
最上段に大きく刻まれた胎蔵界大日如来(五点具足)の種子「アーンク」の月輪は、梵字で光明真言を刻んでいる。
光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ、シャ、ナ、マ、カー、ボ、ダラ、マ、ニ、ハン、ドマ、ジンバ、ラ、ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン」
板碑 頭部
頭部山形、下に二条線、身部は一重線の輪郭を巻く。額部は、薄く突出する。
十三仏の最上段
⑫.胎蔵界大日如来(十三回忌)の種子「アーンク」(○内番号は、十三仏の順序)
十三仏は、死者の追善供養のために①.初七日(不動)、②.二七日(釈迦)、③.三七日(文殊)、④.四七日(普賢)、⑤.五七日(地蔵)、⑥..六七日(弥勒)、⑦.七七日(薬師)、
⑧.百ヶ日(観音)、⑨.一周忌(勢至)、⑩.三回忌(阿弥陀)、⑪.七回忌(阿閦)、⑫.十三回忌(大日)、⑬.三十三回忌(虚空蔵)の十三仏事にわりあてられた仏・菩薩をいう。・・
最初の十仏は、閻魔王など十王の本地仏を、初七日(不動)から三回忌(阿弥陀)までに当て、この十仏に七回忌 阿閦、十三回忌 大日、三十三回忌 虚空蔵を加えたのが十三仏。
通常、最上段は虚空蔵菩薩(三十三回忌)だが、ここでは⑫..胎蔵界大日如来(十三回忌)の種子が刻まれている。
最上段を除く十二仏、最下段向って右の「カーン(不動)」が基点。 | 最上段の種子「アーンク」の月輪は、梵字で光明真言を刻んでいる。 |
十三仏の順序は、最下段右側(不動明王:初七日)を基点として、右から左へ、順次上に上がり、二段目が変則で、最上段を経由して二段目 虚空蔵菩薩(三十三回忌)に戻る。
⑪.阿閦如来(七回忌) | ⑬.虚空蔵菩薩(三十三回忌) |
(バーンク) | (タラーク) |
十三仏 二段目
⑪.阿閦如来の種子は「ウーン」だが、ここでは「バーンク(金剛界大日如来)」で、別体の種子をあてている。
石村喜英氏は、板碑の総合研究(1)総論編(柏書房)、「題目、名号、十三仏板碑」項で、「密教教理の立場では、大日如来は万徳を保持する仏尊で
あり、その一部の得をつかさどるのが諸仏諸尊であるとする教義上の論理からは、大日如来の種子は諸仏諸尊に通ずることになろう」と述べている。
⑩.阿弥陀如来(三回忌) | ⑨.勢至菩薩(一周忌) |
(キリーク) | (サク) |
十三仏 三段目
⑧.観音菩薩(百ヶ日) | ⑦.薬師如来(七七日) |
(サ) | (バイ) |
十三仏 四段目
⑥.弥勒菩薩(六七日) | ⑤.地蔵菩薩(五七日) |
(ユ) | (カ) |
十三仏 五段目
④.普賢菩薩(四七日) | ③.文殊菩薩(三七日) |
(アン) | (マン) |
十三仏 六段目
②.釈迦如来(二七日) | ①.不動明王(初七日) |
(バク) | (カーン) |
十三仏 最下段
最下段右側を基点として、右から左へ、初七日の不動明王から始まり最上段を経由して二段目、三十三回忌の虚空蔵菩薩で終わる。
刻銘:「享徳二年(1453)、癸酉、卯月八日」 | 刻銘:「逆修、見高、大姉」 |
身部中央に、「享徳二年(1453)、癸酉、卯月八日」の紀年銘、下方に「逆修、見高、大姉」と刻んでいる。
見高大姉という女性が生前、自らの「現世安穏後生善処」を願い法要を行う、「逆修供養」碑として享徳二年(1453)に造立された。
板碑、根部
小堂に安置されている石仏と板碑
*東武東上線 「東松山駅」下車、東口より北東方向へ徒歩 約20分。
(撮影:平成24年11月11日)