一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏

 一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏(奈良県生駒郡三郷町勢野東6-7-27)

  鎌倉時代、笠置山解脱上人 貞慶が中興したと伝える惣持寺(廃寺)の遺品。石仏は、仏師 快慶の作品であることが確認されている。

一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏(鎌倉時代初期、生駒石:花崗岩、高さ 191Cm 幅 185Cm)

踏割り蓮華上に立つ薬師如来を中央に、日光・月光両菩薩を両脇に、さらに十二神将を配する。針で刻んだような線刻で一針薬師と呼ばれる

建長五年(1253)に書かれた「三輪上人行状記」に、三輪上人(慶円)は、惣持寺の本尊・快慶作 薬師如来の開眼導師を解脱上人貞慶に依頼され行ったとあり、

大田古朴氏は、この石仏を「願主:解脱上人」「作図:仏師安阿弥陀仏快慶」「開眼:導師三輪上人慶円」と推定している。

平成二十五年(2013)九月二日の朝日新聞によれば、町教委などでつくる調査委員会が石仏は「快慶作」と断定した。また、快慶最古の作品の可能性があるという。

笠  石

笠石は、 幅 190Cm、奥行き 100Cm、厚さ 20Cmで、下面に小さく細い字の刻銘がある。

刻銘:「為本願口口上人・・・・・」「一周忌之・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・」「結縁衆僧・・・」・・・・・・・・

踏み割り蓮華座上に立つ薬師如来 薬師如来のみ薄肉彫りで像の形をつくり、細部は線刻

一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏(鎌倉時代初期)

中央に像高152Cmの薬師如来、左右に像高76Cmの日光・月光両菩薩、両端周囲に像高61Cmの十二神将像を彫る。

十二神将の二体は立像、残る十体は円相と頭部のみで表現される。中央の薬師如来のみ薄肉彫りし、他は線刻とする。

一針薬師(ひとはりやくし)笠石仏 下方、向かって右側

日光菩薩の下部と蓮華座が見える

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笠地蔵石仏(中央、線刻)

春日神社から持聖院への参道脇、覆屋の中央に置かれているが、剥落し像容は不明

 石  仏-紀年順-目次

*一針薬師へはJR関西本線「王寺駅」下車、徒歩12分。駅の北側、大和川を挟んだ対岸の春日神社境内の裏手にあった。快慶作の石仏と判明し、今は春日神社南西の持聖院(じしょういん)境内に安置され、拝観は事前連絡が必要という。

(撮影:平成19年12月31日、平成23年8月1日)