寺崎(てらさき)石塔婆群 (宮城県石巻市大瓜字寺崎)
五七日忌の本尊 地蔵菩薩の種子を刻む石塔婆で、南北朝時代後期 康応元年(1389)の紀年銘がある。
寺崎(てらさき)地蔵種子石塔婆 (南北朝時代後期 康応元年 1389年、粘板岩、高さ 147Cm 幅 56Cm 厚さ 7Cm)
頭部はアーチ型。身部は、上方に地蔵種子「カ」、その下に梵字 「光明真言」、下方は造立趣旨と紀年銘を刻む。 |
光明真言 (梵字)
光明真言:「オン、ア、ボ、ギャ、ベイ、ロ」、「シャナ、マ、カーボ、ダラ」、「マ、ニ、ハンドマ、ジンバ、ラ」、「ハラ、バ、リタ、ヤ、ウーン、ダ」
石塔婆 下方、刻銘
下方の刻銘は、中央に「右意趣者為 康應元年(1389)、己巳、五月、結衆、敬白」、
向って右に「逆修講結衆等若掾没後五七日」、左に、「資糧乃至法界食清平等利益也」と刻む。
刻銘:「康應元、年(1389)、己巳、五月」 | 願文の「没後五七日」と主尊の地蔵種子「カ」は関連する。 |
寺崎(てらさき)石塔婆群 (宮城県石巻市大瓜字寺崎)
薬師種子「バイ」を主尊とする石塔婆で、室町時代前期 応永三年(1396)の紀年銘がある。
寺崎(てらさき)薬師種子石塔婆 (室町時代前期 応永三年 1396年、粘板岩、高さ 70Cm 幅 37Cm 厚さ 6Cm)
石塔婆は、上方に薬師如来の種子「バイ」、その下に涅槃経に出る偈(げ)、下方に造立趣旨と紀年銘を刻む。 |
石塔婆は、全体的に傷みがあり、かなり風化・摩耗が進んでいる。
身部上方、薬師種子
薬師如来の種子「バイ」を薬研彫する。
一般の薬師信仰と違い、石塔婆(板碑)で薬師種子が刻まれるのは少ない。
忌日供養では、薬師は七七日(四十九日)忌の本尊に割り当てられているが、中世 当地では七七日よりも五七日(三十五日)忌の地蔵が圧倒的に多い。
涅槃経に出る偈(げ)
偈(げ):「一切衆生(いっさいしゅじょう)、悉有佛性(しつうぶっしょう)、如来常住(にょらいじょうじゅう) 、無有変易(むうへんやく)」
[ 一切の衆生は、ことごとく仏性あり、如来は常住にして、変わることなし。 ]
石塔婆 下方、刻銘
刻銘は、中央に「応永三年(1396)、丙子」、その向って右に「為・・・・・・・・・・・・・・・」と刻まれている。
寺崎(てらさき)石塔婆群
写真、中央の梵字 光明真言が刻まれているのが本地蔵種子石塔婆。
*JR石巻駅から北東方向へ 約3.7Km。石巻駅前のレンタカーの店で、自転車を借りるのが便利。住所でいえば、石巻市大瓜字寺崎90くらいの所で、道路沿いに立っている。当地域は、地元住民を対象にした乗合タクシーがあるだけで、バスの便はない。
(撮影:平成26年4月12日)