南貞院 阿弥陀三尊種子自然石塔婆

 南貞院(なんていいん)(青森県弘前市高杉山下208)

  阿弥陀三尊種子・名号・光明遍照 偈(げ)を刻む浄土系の石塔婆で、鎌倉時代後期 正和元年(1312)の紀年銘がある。

南貞院 阿弥陀三尊種子自然石塔婆 (鎌倉時代後期 正和元年 1312年、安山岩、高さ 91Cm 幅 87Cm)

南貞院境内、覆屋内に立っている。荒く成形をした駒形状の石面に阿弥陀三尊種子と名号、紀年銘、光明遍照偈、造立趣旨を刻む。

石塔婆 上方

二線を引き、内に「南无阿弥陀佛」の六字名号を刻む。

石塔婆 中央

中央に大きく阿弥陀三尊種子、左右の二線内側に紀年銘を刻む。

三尊種子は、上方に阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左に勢至菩薩の種子「サク」を刻む。

紀年銘は、向って右に「正和仲冬(十一月)日」、左側に「元年(1312)壬子中旬」と刻まれている。

刻銘:元年(1312)壬子中旬」 刻銘:「正和仲冬(十一月)日」

石塔婆 下部

枠内 右から四行で、「光明遍照、十方世界、念仏衆生、摂取不捨」の観無量寿経に出る偈、

次に四行「右円寂義御前、当五七忌為仏、陀刻石塔聖九、品一利證無生恩」、左右の二線内に「施主」、「謹立」と刻む。

円寂という女性の五七日忌(三十五日)追善供養として、この石塔婆が造立された。

観無量寿経に出る偈(げ)

偈(げ):「光明遍照(こうみょうへんじょう)、十方世界(じっぽうせかい)、念仏衆生(ねんぶつしゅじょう)、摂取不捨(せっしゅふしゃ)

[ 光明はあまねく十方世界を照らし、念仏の衆生をば摂取して捨てたまわず。]

現地説明板(部分) 鎌倉時代後期 正和元年(1312)在銘の石塔婆で、資料としても貴重。

南貞院 阿弥陀三尊種子自然石塔婆 (鎌倉時代後期)

近くに八重の森があり、そこに曹洞宗 長徳寺が建っていた。この石塔婆も八重の森にあったもので、南貞院に移されたという。

 三世寺(さんせじ) 金剛界大日種子自然石塔婆                  石仏と石塔-目次!

南貞院 (なんていいん)

南貞院は、江戸時代前期 延宝年間(1673~81年) 南貞和尚が開いたと伝える。

南貞院観音堂は、津軽三十三観音 第四番札所。

 板碑(いたび)

*JR 弘前駅前から弘南バス 弘前~糠坪・楢の木・堂ヶ沢線に乗車、「高杉バス停」下車、西方向へ約300m。

(撮影:平成25年10月13日)