(弘前市史No:弘前44 )
国吉板碑群(くによしいたびぐん)(青森県弘前市国吉字村元)
阿弥陀三尊種子を主尊とする石塔婆で、鎌倉時代後期 元応三年(1321)の紀年銘がある。
阿弥陀三尊種子石塔婆 (市指定文化財、鎌倉時代後期 元応三年 1321年、安山岩、高さ 150Cm 幅 51Cm 厚さ 21Cm)
石塔婆群、左列五基の右端。縦長で板状の石塔婆、輪郭線はない。石面は上方に阿弥陀三尊種子、下方は二段に銘文を刻む。 |
阿弥陀三尊の種子
阿弥陀三尊種子を刻む。主尊の阿弥陀種子は摩耗しているが、涅槃点(:)がはっきりと確認できる。
三尊種子は、上方に阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下に観音菩薩の種子「サ」、左下に勢至菩薩の種子「サク」を刻む。
身部上方、阿弥陀三尊の種子 | 身部下方、上段に法華経 譬喩品に出る偈、下段に願文・紀年銘。 |
身部下方の刻銘は、上段に法華経 譬喩品に出る偈(げ)「三界無安、猶如火宅、衆苦充満、甚可怖畏」を刻み、
下段に「右善根之意趣者、当悲母幽口諸口、乃至口口口口口、元応三年(1321)十月 日敬白」と刻む。
法華経譬喩品に出る偈(げ)(刻銘 上段)
偈(げ):「三界無安(さんがいむあん)、猶如火宅(ゆにょかたく)、衆苦充満(しゅくじゅうまん)、甚可怖畏(じんかふい)」
[ 三界(欲界・色界・無色界)は安きことなし、なお火宅(燃えている家)の如し。衆苦(しゅく)は充満して、甚(はなは)だ畏怖(いふ)すべきものなり ]
石塔婆 下方(刻銘 下段)
四行の銘文で、右から三行が願文、最終行は紀年銘を刻む。
刻銘:「右善根之意趣者、当悲母幽口諸口、乃至口口口口口、元応三年(1321)十月 日敬白」
刻銘:「元應三年(1321)」 | 石塔婆、側・背面 |
国吉石塔婆群、左側面の五基
本 阿弥陀三尊種子石塔婆は、向って右端。
国吉板碑(石塔婆)群 配置図 (現地説明板 部分)
国吉板碑群は、(1)~(12)の12基が市の文化財に指定されている。
本 阿弥陀三尊種子石塔婆は(4)の位置に立つ。
国吉(くによし)板碑群
石塔婆群は、岩木川が蛇行する阿弥陀ヶ淵付近の田の中に散在していた石塔婆を一ヶ所に集めたもの。
*JR弘前駅前から弘南バス 弘前~大秋・川原線に乗車、「高野バス停」下車、南西方向へ 約800m。「弘前駅観光案内所」で、レンタサイクルを利用するのも便利。
(撮影:平成25年10月14日)