(弘前市史No:弘前43 )
国吉板碑群(くによしいたびぐん)(青森県弘前市国吉字村元)
上方に阿弥陀三尊、下方に涅槃経に出る偈(げ)を刻む石塔婆で、鎌倉時代後期 正和五年(1316)の紀年銘がある。
阿弥陀三尊種子石塔婆 (市指定文化財、鎌倉時代後期 正和五年 1316年、安山岩、高さ 130Cm 幅 90Cm 厚さ 28.5Cm)
石塔婆群、正面三基の左端。外観を三角形に荒成形、正面の石面を研磨し、上方に阿弥陀三尊種子、下方に四行の銘文を刻む。 |
尚尚、石面に凸形の輪郭線を入れ、上方の三尊種子と下方の銘文を共通の郭線で分離する。
石塔婆 上方
方形の輪郭内に阿弥陀三尊種子を刻む。
三尊種子は、上方に阿弥陀如来の種子「キリーク」、向って右下 に観音菩薩の種子「サ」、左に勢至菩薩の種子「サク」を月輪なしに刻む。
主尊の阿弥陀種子と脇侍の観音・勢至種子の大きさがあまり変わらない。
石塔婆 下方
四行の銘文で、右から二行が涅槃経に出る「諸行無常」の偈(げ)、次の一行が願文、最終行は紀年銘を刻む。
刻銘:「諸行無常 是生滅法、生滅々已 寂滅為楽、
右志者逆修善根也、正和五(1316)、丙辰、八月口口、頓阿」
正和五年(1316)、頓阿という阿号を持つ阿弥陀信者が、生前に自分の為、死後の法要を営んで本石塔婆を造立した。
願文と紀年銘 | 涅槃経に出る偈(げ) |
刻銘(願文と紀年銘):「右志者逆修善根也、正和五(1316)、丙辰、八月口口、頓阿」
偈(げ):「諸行無常(しょぎょうむじょう)是生滅法(ぜしょうめっぽう)、生滅々已(しょうめつめつい)寂滅為楽(じゃくめついらく)」
[ 諸行は無常である。これ生滅の法である。生滅を滅しおわりて、生も滅もない寂滅を楽しみとする。]
刻銘:「正和五(1316)、丙辰、八月」 | 鎌倉時代後期 正和五年(1316)の造立になる石塔婆。 |
目谷地区に関する文書の初見は、南北朝時代 初期 建武二年(1335)の北畠顕家国宣写文が知られているが、
それより古い鎌倉時代後期の銘文が本石塔婆群に刻まれている。口口口口口口口口口口口口口口口口口口・
国吉石塔婆群、正面の三基
本 阿弥陀三尊種子石塔婆は、向って左側。
国吉板碑群 現地説明板 配置図
国吉板碑群は、(1)~(12)の12基が市の文化財に指定されている。
本 阿弥陀三尊種子石塔婆は(3)の位置に立つ。
岩木山(1624.7m)
「国吉板碑群」から見た岩木山(津軽富士)。
*JR弘前駅前から弘南バス 弘前~大秋・川原線に乗車、「高野バス停」下車、南西方向へ 約800m。「弘前駅観光案内所」で、レンタサイクルを利用するのも便利。
(撮影:平成25年10月14日)