水元神社(みずもとじんじゃ)薩摩塔

 水元神社(みずもとじんじゃ)(鹿児島県南九州市川辺町清水)

   薩摩塔は九州の西側に偏在する石塔で、現在 約40基を数えるが完形が少ない。本塔は、その中で保存が良く代表的ものといえる。

水元神社(みずもとじんじゃ)薩摩塔 (市指定文化財、鎌倉時代~南北朝時代、凝灰岩、高さ 194Cm)

水元神社境内の北東角に設置されている。また薩摩塔の名称は、京都資料梵字研究所所長の斎藤彦松氏より命名された。

薩摩塔は、九州の西側に偏在する独特のもので四角型と六角型のものがある。本塔は六角型で、須弥壇部に四天王像、壺型の塔身に如来坐像が刻まれている。

また、薩摩塔は中国で制作されたと推定され、石材も淅江省産の「梅園石と認定可能な石材」が使われている。

頂部及び屋根

現在、頂部は欠失し別物が置かれている。屋根は六角で、上端に枘穴があり、棟の反りは強い。

屋根 軒

屋根の軒は、平面円形の垂木型を刻出する。

塔 身

壺型の塔身は、正面に龕を穿ち内に本尊の如来形坐像を厚肉に刻む。

本尊は、蓮華座上に坐し、両手で薬壺のようなものを持つ。お顔は穏やかで、衲衣の表現も細かく刻んでいる。

塔身の如来坐像 塔身(壺型)、背面

薩摩塔は、塔身の壺形から中国の神仙思想を反映したものではないかと考えられている。

須弥壇、上框(うえがまち)及び高欄 (中台)

六角形で、側面上方は高欄文様を半肉彫りする。

軸部の四天王、「持国天(東方)」 軸部の四天王、「増長天(南方)」

四天王は、各尊とも雲に乗り厚肉に刻まれている。

須弥壇

上から、高欄及び上框(うえかまち)(中台)、軸部(竿)、下框(したがまち)(基礎)。

薩摩塔を特徴づけているのは、軸部の四天王にあり、下框(基礎)下の蝶足(ちょうあし)も中国風。

軸部の四天王、「広目天(西方)」 軸部の四天王、「「多聞天(北方)」

塔を持つ多聞天は、一尊では毘沙門天の名で祀られる。

下框(したがまち)(基礎)及び足(蝶足)

下框の上端は六角座で、上方は繰形風。足は六角で、隅に蝶足を配している。

水元神社(みずもとじんじゃ)薩摩塔 (市指定文化財、鎌倉時代~南北朝時代)

本塔は、薩摩塔の中で最も大きいもので、また薩摩塔としての洗練度が高い。

薩摩塔の移入者は、発見場所の分布状況から中国僧ではなく、中国商人と考えられている。

水元神社(みずもとじんじゃ)拝殿

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雲朝寺跡(うんちょうじあと)

雲朝寺跡は、清水磨崖仏群から水元神社に行く途中にあり、薩摩塔は雲朝寺跡で発見され、水元神社に移されたという。

*JR鹿児島中央駅から鹿児島交通 枕崎行きに乗車、「川辺やすらぎの郷バス停」下車、徒歩 約40分。清水磨崖仏群から南西方向へ約10分。

(撮影:平成26年5月26日)